現場へと臨場した深瀬は、急いで来たからか、まだどこか眠たそうにも見える。

「遺書はないのか」

「今のところ見つかっていません。どう見ても猟奇殺人ですし」

笹井は遺体を思い出したのか、具合の悪そうな顔をして道を空け、改めて顔を上げた。

「深瀬さん、この捜査、ご一緒できて光栄です。よろしくお願いします!」

快活な声で再び敬礼した笹井だが、その言葉を聞き流すように深瀬は告げた。

「俺に相棒は必要ない、俺には近寄るな」

「すみません」

言われた笹井は少し後退りした。近寄るなというのを、馴れ馴れしくするなという意味に捉えたが、深瀬は実際に笹井をのけるように手を払った。

物理的に近寄るなと言われたのか、と笹井は内心首を傾げる。確かに、見た目からして近寄りがたさがある人物ではあった。

「でも、あの……深瀬さんが来られたということは、一緒に捜査しろという指示ですよね?」

だから僕の相棒は深瀬さんということじゃないんですか、と笹井は心の中で思ったが、聞けなかった。現場はそんな雰囲気ではない。

「獣が潜んでいるような空気だ」

笹井を無視した深瀬は、玄関の前で仁王立ちしたまま呟く。家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としているように深瀬には感じられた。

 

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