自分の夢なんて、頭の中で見ることだから、「今日はこの夢を見よう」と思って容易に見られるものじゃない。ましてや、想像で創った人間だとしても、同じ人間なんてそう規則的に見られるものじゃないだろう? ユメジは夢の中に現れる。

厄介なことに、ユメジにはおれの日常生活をすっかり見られていた。おれが起きている時に語り掛けることはできないが、夢の中で、今日一日にあった出来事について、ユメジはつかえていたものを吐き出すようにとめどなく尋ねてくる。

そのくせ、ユメジは自分のこととなると、からきし口を閉ざしてしまう。その深くを聞こうとしても、笑って受け流されるばかりだった。そんな訳で、十三年間も生きてきたのに、ユメジのことはロクに知らなかった。

みんなにはユメジの存在のことなんて、言えない。

おれが小さいころに家族に言ったら酷く馬鹿にされたことを覚えている。父は現実主義者で幽霊みたいな幻想世界を知らない性質だったから、「そんなもの、いるはずないだろ」の一言で片づけられたし、その教えを受けている妹にも「頭がおかしいんじゃないの」と笑い飛ばされた。

まるで、子供の戯言を聞いている様にしか取り扱ってくれなかった。その小さいころの記憶は朧気にしか残っていないのに酷く傷ついた思い出として鮮明に残っている。あの時は夢の中でユメジにも泣きながら話したっけ。

それから、皆の前で、ユメジのことを口にするのはやめた。言ったとしても、どうせまた信じてくれない。おれはユメジのことは日常ではすっぱり切り離して何事もなく振舞った。それまでは。

給食の終わりを知らせるチャイムが鳴った。それと同時に、学校は昼休みの時間帯を迎える。晴れの日の、人の声の失せたグラウンドは、束の間の解放感を味わっているようだ。そこに、人が一人、また一人と吐き出されていく。

「トシ、キャッチボールしよう!」

クラスメイトの高見浩介に誘われて、おれはグラウンドに出ていく。下駄箱に靴と一緒に忍ばせておいたグローブとボールを取って、これが一年の時からの日課だった。

グラウンドにはバレーボールをしている女子たち、サッカーをしているグループ、様々だった。浩介の投げた球の白が、青い空によく映える。ふいに、浩介がキャッチボールを止めた。

「浩介、どうしたんだよ」

おれは浩介のほうに駆け寄ると、浩介は目で、投球をやめた原因を指した。グラウンドの正面は、校舎の教室の窓がずらりと並んでいる。教室の窓からはグラウンド一面が見渡せるという訳だ。おれは目を細めて上を仰いだ。浩介の視線の先は、おれたち二年生の三階の教室の一コマの枠だった。

「あいつ」

こちらをずっと見ている、制服姿の女子。髪の肩の長さぐらいで、肌が白かった。こちらの視線に気づいたのか、サッと教室の奥に隠れてしまった。

 

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