A 「まったくあの欲張りばばあには、手を焼くよ。お前がいなくなったから、寂しかったよ」なんて言うてんねんで、きっと。
B ちょっと想像し過ぎとちゃうか。
A いいや。おばあさんがきつくなったんは、おじいさんのせいや。こんなグウタラな亭主といると、きつくもなるで。
B まあ、そうかも知れんなあ。
A 雀も雀やで、今迄世話になったことも、糊を食べてしもた悪事も忘れて、つづらにバケモノを詰めて復讐しようとして、ほんまに根性悪やで。
B それもそうやわな。
A おじいさんも甲斐性なしのくせに、ええ格好して、気取って「小さい方」なんて言うねん。
B でも遠慮して謙遜してんねん。
A 謙遜なんかやない。ほんまは大きい方を貰いたかったけど、見栄張ってんねん。見栄張るのだけは、一丁前や。
B ぼろくそやな。
A 金銀財宝を見て、今迄貧しかったおばあさんの心が揺らぐねん。
B ノラクラじいさんに我慢してるのに、じいさんは雀といちゃつくし、借金もいっぱいあるし、おばあさんも苦労やな。
A あんたもだんだん分かってきたな。糊の代金だけでも返して貰おうと、雀の所へ行くねん。「大きい方、大きい方」と叫ぶねん。いじらしい程素直やろ。
B でもやっぱり大きいのは厚かましいで。
A 雀は「やったァ」とにんまりと笑って、大きいつづらを渡して「おばあさん、お気をつけて」なんて送り出すねん。
B 雀もなかなかやるな。
A おばあさんは借金の返済や、米の買い出しで頭の中はいっぱいなんや。
B 開けたらやっぱりバケモンなんやろ、可哀そう。
A すっかり心を入れ替えて、おじいさんと仲良く暮らしましたとさで、お話は終わってるけど、この話は悲しい女性の物語やで。
B なんか気の毒な気がしてきたわ。
A 女は強欲ではない。男がそういう女を作ってしもたんや。
B なんか考えさせられる昔話やな。
A 男が家庭というものの上に、アグラをかいてるからや。昔話は男が書いてるから、いつも良いのはおじいさんで、悪いのはおばあさんになってるねん。男はほんまに勝手やで。
B 俺も反省せなアカンな。