第一章 家族ネタ

夫と妻の関係

A あんたんとこの旦那さん、だんだん無口になってきてない?

 なってる、なってる。なんでやろ。

 夫が無口になっていくのは、あんたと一緒にいるからや。

 なんで私といたら無口になるねん。

 喋る隙がないねん。あんたばっかりが喋るから、夫は無口になっていくねん。

 そんなんおかしいやん。喋りたかったらどんどん喋ったらええんとちゃうか。

 旦那が無口やから、あんたがお喋りになったんか、どっちやねん。

 考えてみたら、旦那はほんま、ほとんど口答えした事ないもんな。

 可哀そう。

 そやから夫婦喧嘩いうても、一方的に私が怒鳴り、喚くねん。

 よう旦那さん辛抱してるな。

 でもな一方的に怒鳴ってばっかりやと、終わってもなんか不戦勝みたいな気持ちやで。何か物足らん変な気持ちやで。

 それは贅沢ちゅうもんやで。

 ぬかに釘、暖簾に腕押しで、戦っても勝った充実感はないで。

 そんなもんかな。ちょっとでも反論して気持ちをいうてくれた方が、スッキリするかもな。

 友達にも、うちと同じ様な夫婦がいるねん。そこも奥さんが一方的に喚きたてて、もうあんたみたいな甲斐性なしとは、これ以上一緒に暮らせません。もう嫌ですって言うてん。

A 御主人どないしたん。

 旦那さん黙って立ち上がって、部屋を出て靴を履いてな。

A ほんで、ほんで。旦那さん言われっぱなしで出ていったん。気の毒。

 玄関の戸を開けて出ていったんや。

 勇気あるやん。その旦那さん。

 まだ続きがあるねん。

 なに続きって。

 旦那さんが、戸を閉め際に一言言うてん。「こっちも嫌なんじゃ」って。

 偉い、よう言うた。その旦那さん。

 旦那さんの靴音が遠ざかっていきましたということや。

 いや、いや。意外な結末やね。

 勝ったはずの奥さんが、しばらく一点を睨んだまま呆然としとってんて。