第一章 家族ネタ
夫と妻の関係
A あんたんとこの旦那さん、だんだん無口になってきてない?
B なってる、なってる。なんでやろ。
A 夫が無口になっていくのは、あんたと一緒にいるからや。
B なんで私といたら無口になるねん。
A 喋る隙がないねん。あんたばっかりが喋るから、夫は無口になっていくねん。
B そんなんおかしいやん。喋りたかったらどんどん喋ったらええんとちゃうか。
A 旦那が無口やから、あんたがお喋りになったんか、どっちやねん。
B 考えてみたら、旦那はほんま、ほとんど口答えした事ないもんな。
A 可哀そう。
B そやから夫婦喧嘩いうても、一方的に私が怒鳴り、喚くねん。
A よう旦那さん辛抱してるな。
B でもな一方的に怒鳴ってばっかりやと、終わってもなんか不戦勝みたいな気持ちやで。何か物足らん変な気持ちやで。
A それは贅沢ちゅうもんやで。
B ぬかに釘、暖簾に腕押しで、戦っても勝った充実感はないで。
A そんなもんかな。ちょっとでも反論して気持ちをいうてくれた方が、スッキリするかもな。
B 友達にも、うちと同じ様な夫婦がいるねん。そこも奥さんが一方的に喚きたてて、もうあんたみたいな甲斐性なしとは、これ以上一緒に暮らせません。もう嫌ですって言うてん。
A 御主人どないしたん。
B 旦那さん黙って立ち上がって、部屋を出て靴を履いてな。
A ほんで、ほんで。旦那さん言われっぱなしで出ていったん。気の毒。
B 玄関の戸を開けて出ていったんや。
A 勇気あるやん。その旦那さん。
B まだ続きがあるねん。
A なに続きって。
B 旦那さんが、戸を閉め際に一言言うてん。「こっちも嫌なんじゃ」って。
A 偉い、よう言うた。その旦那さん。
B 旦那さんの靴音が遠ざかっていきましたということや。
A いや、いや。意外な結末やね。
B 勝ったはずの奥さんが、しばらく一点を睨んだまま呆然としとってんて。