A それが不戦勝の気分やね。なんか奥さんも気の毒な気がして来たわ。
B 捨てぜりふって、弱い者がいうものと決まってるやんか。今回は強い者の方が、辛く寂しかったっていうことや。
A この頃の弱い旦那さんは、奥さんの事をなんて呼んでるんやろ。
B 今の若者は名前で呼ぶのが多いんとちゃうか。
A 二人が納得してたらええねんや。
B 旦那の親の前では、絶対に呼び捨てはあかんで。
A なんで。
B 特に母親の前ではあかん。可愛い息子を嫁が呼び捨てにするなんてって怒りよるで。
A 息子が納得しとったらええやんか。
B あんたは息子の給料で生活してるんやろって言いよるで。
A うるさいババアやな。そんなおとなしい亭主ほど、近所のおばちゃんに、評判がええねん。
B 悟りを開いたお坊さんの様な旦那さん。
A なんや悟りを開いたお坊さんて。
B 出世も願わず、昇給も願わず、電車から吐き出されて、会社に行き、電車に押し込まれて、我が家に帰ってくる。
A みじめやなあ。
B 帰って来たら「ああ、疲れた」って口癖みたいに言うねん。
A ほんまに疲れてるねんで。
B 女や子供の様に、ネを上げるのを、恥と思う精神が欠如してるねん。
A そうやろか。
B アゴを出すのを当たり前やと思ってんねん。
A どこの奥さんも、そう思ってるんかな。
B その証拠に、そんな事してたら、パパみたいになるよって言われてるやろ。
A 子供の教育に悪いなあ。
B 子供も、よう知ってて、分からんことがあっても、父親には絶対聞きよらへん。
A 今の子供も怖いな。
B あんたのとこも気をつけや。
A もうええわ。