第一章 家族ネタ

老後

A 私らも年取ったな。

B 右見ても左見ても年寄りばっかりや。

A 香港に負けたんやで。香港が世界一の長寿国になったんやで。

B 一番二番いうても、あんまり変わらんで。

 シワの中に白粉ブチ込んだ粉吹きババアばっかりやで。

 失礼やと思うけど、ほんまにそうやな。

 お若く見えますねっていわれて、お年寄りは喜ぶやろ。

 若く見えるのと、若いのとは違うからな。

 百才いうても今は珍しくないもんな。

 老人ホームで百才の人に声掛けてみ。

 おばあちゃん、楽しいですか。

 楽しくなんかないよ。

 おめでとうございます。百才ですよ。

 おめでたくなんかないって思ってるで。

 そうやろか。

 百才のおばあさんが、敬老の日にレポーターにインタビューされてるのを見るやろ。

A 見る、見る、敬老の日には、決まってテレビでやってるな。

 「お元気ですね。長生きの秘訣は何ですか?」ってレポーターが言うねん。

 言うてる、言うてる。

B 「長生きなんかしたくないよ! 死なないから生きてるんだよ! クソッタレ!」

 えらい、ひねくれてるな。まあ百才が珍しい間は騒がれるけど、これ以上百才の人が増えたら、洟も引っかけられへんようになるやろな。

 そらそうや。パンダが山程増えてみ。誰もパンダを見に行かへんようになるで。

 猫みたいにたくさんいたら誰も見に行かへんわな。

 私らは生きる苦労には馴れて、大体のコツは呑み込めたけど、死ぬのは馴れてへんから、困るわな。

 死ぬのは予想つかへんからな。

 死ぬ用心はでけへんけど、馴れとかんとな。

 どうやって馴れとくねん。

 一回経験した方がええんとちゃうか。

 アカン、アカン。死んでしもたら経験にならへん。

 その内ボケてる事にも気づかんようになるねんで。

 ほな、どないなるん。

B それが本格的にボケたちゅう事や。

 ひゃー怖いな。

B あの女優何ていうたっけ。鼻の整形手術して、天狗みたいに高過ぎた鼻になった女優誰やった。