第一章 家族ネタ
老後
A 私らも年取ったな。
B 右見ても左見ても年寄りばっかりや。
A 香港に負けたんやで。香港が世界一の長寿国になったんやで。
B 一番二番いうても、あんまり変わらんで。
A シワの中に白粉ブチ込んだ粉吹きババアばっかりやで。
B 失礼やと思うけど、ほんまにそうやな。
A お若く見えますねっていわれて、お年寄りは喜ぶやろ。
B 若く見えるのと、若いのとは違うからな。
A 百才いうても今は珍しくないもんな。
B 老人ホームで百才の人に声掛けてみ。
A おばあちゃん、楽しいですか。
B 楽しくなんかないよ。
A おめでとうございます。百才ですよ。
B おめでたくなんかないって思ってるで。
A そうやろか。
B 百才のおばあさんが、敬老の日にレポーターにインタビューされてるのを見るやろ。
A 見る、見る、敬老の日には、決まってテレビでやってるな。
B 「お元気ですね。長生きの秘訣は何ですか?」ってレポーターが言うねん。
A 言うてる、言うてる。
B 「長生きなんかしたくないよ! 死なないから生きてるんだよ! クソッタレ!」
A えらい、ひねくれてるな。まあ百才が珍しい間は騒がれるけど、これ以上百才の人が増えたら、洟も引っかけられへんようになるやろな。
B そらそうや。パンダが山程増えてみ。誰もパンダを見に行かへんようになるで。
A 猫みたいにたくさんいたら誰も見に行かへんわな。
B 私らは生きる苦労には馴れて、大体のコツは呑み込めたけど、死ぬのは馴れてへんから、困るわな。
A 死ぬのは予想つかへんからな。
B 死ぬ用心はでけへんけど、馴れとかんとな。
A どうやって馴れとくねん。
B 一回経験した方がええんとちゃうか。
A アカン、アカン。死んでしもたら経験にならへん。
B その内ボケてる事にも気づかんようになるねんで。
A ほな、どないなるん。
B それが本格的にボケたちゅう事や。
A ひゃー怖いな。
B あの女優何ていうたっけ。鼻の整形手術して、天狗みたいに高過ぎた鼻になった女優誰やった。