「今は花が咲いてとっても綺麗だけど、冬はとっても寒いんだよ。ママにたくさん服を着せてもらわないと外を歩けないくらい」
「そんなに寒いの? でも大人になったらまた来たいなぁ……」
悲しいことに、僕にはその言葉の意味が分からなかった。家に着くと祖母が大きく手を広げて迎えてくれた。
「Marlon、今日は楽しかった?」
僕は少し照れながらLisaの顔を見上げて頷いた。
「Lisa、今日はMarlonと遊んでくれてありがとう」
何か意味ありげに祖母にウィンクするLisa。
「さあ、クッキーの用意が出来てるからこっちに来て」
僕らが顔を見合わせて首をすくめ、クスッと笑い合うと祖母が戸惑ったような顔になってLisaに聞いた。
「あら、今日は何かあったのLisa」
「いいえ、何も。今日のMarlonはとびっきり良い子だったわ」
悪戯好きのLisaが少し大人びて言った。そしてなにより、今日のクッキーはいつもより美味しい。最高だね! 椅子に座ったまま、嬉しさのあまりジャンプしながらクッキーを頬張る。だって、僕がどんなに良い子だったか、Lisaは祖父と祖母にいつもより大袈裟に話をしてくれているから。
「Good Boy, Marlon」
Lisaはいつもそう言ってくれる。窓からたくさんの光が差し込み、皆の笑顔がキラキラと輝く午後のティータイム。
僕には知る由もない。この日がLisaとの最後のピクニックだったとは。幼い僕にとって別れは突然やって来た。
わずか3ヶ月。
僕は良い子じゃなかったの? ずーっとここにいると思っていたのになぜ? 日本は僕が歩いて行ける所にあるの? Lisa、ここにいるって言ったのは嘘だったの?
「ママ、お願いがあるの。Lisaにお別れを言いたいから、Lisaが日本へ帰ってしまう朝、おじいちゃん、おばあちゃんの家に行っても良い?」
僕は母にLisaにお別れの挨拶をしたいから最後の日に祖父母の家に行かせてほしいと必死に頼んだ。しかし母は戸惑ったように首を横に振り続けた。
「Marlon。あなたが病気でもない限り、学校を休んだり遅刻をしてはいけないことなの」
僕は必死でお願いをした。
「でも……、Lisaはいなくなっちゃうんだよ。もう会えないんだよ。だから、きちんとお別れの挨拶をしたいんだ。悪いことなの? Lisaに会った日に、僕はきちんと挨拶が出来なかったから、お別れの挨拶はきちんとしたいんだよ。もちろんさよならを言ったその後、僕はちゃんと学校に行くよ。ママ、お願い。Lisaに最後のお別れの挨拶をさせて、お願い」
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