「島田さん、白川さん、中華街探索の件、実行していなくて申し訳ないですね。代わりと言っては失礼だけど、来月二十日の日曜日にクラシック演奏会にお誘いしたいのですが。三枚申し込んだのですが、どうしても二枚しか取れなくて。この二枚も、運よくキャンセルのチケットがあったのです」

「残念だけど、私は、来月の二十日は、茶道のお茶会があります。お点前を披露することになっています。白川さん、お願いします」

「私は、クラシック演奏会は好きですが、私でいいの? 富永さん」

「お願いします。中華街の約束を少しでも償わないと」

「どういう演奏会ですか?」

「朝日交響楽団の演奏で、横浜みなとみらいホールが会場です。曲目は、ヴィヴァルディの四季など、です」

「まあー、ヴィヴァルディは大好きです。島田さん、本当にいいの?」

「白川さん、遠慮しないでください。その代わり、次回はわたしの番にしてください。富永さん、良いですね」

「お二方とも、ありがとうございます」

富永は、白川さんとのデートの約束が決まり、内心喜んだ。

一か月後、富永が国際会議室の改装や、SDGsの事務連絡などでバタバタしている間に、クラシック演奏会の日がやってきた。

午後一時半に、会場前で待ち合わせをして入場した。キャンセルのチケットだったので、一階中ほどの良い席だった。

ヨーロッパの有名な指揮者による豪華な演奏会だ。席数は約二千席ある。クラシック演奏会独特のアカデミックな雰囲気がする。

何となく上品そうな人が多い。白川さんも富永も、いつもよりも少しおしゃれをしている。いよいよコンサートが始まる。次第に身も心も音楽と一体化していく。大人の至福な時間で、贅沢な空間だ。

白川さんの横顔を見ると、幸せそうだ。富永は、二人が恋人同士になった気持ちだ。

ヴィヴァルディの「四季」、およびストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」は、現実の世界を忘れさせてくれる。リズミカルな音に乗って体が動き、心がウキウキしてくる。生演奏の貴重な時間となった。

 

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