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転職

翌週から、総務課は忙しくなってきた。課長が課員を集めた。

「社長からの提案で、当社もSDGsを導入する方針だ。富永君、SDGsの背景を少し調べてくれ」

「承知しました。情報集めをします」

「中間報告でいいから、三日以内にやってくれ」

富永は、急に忙しくなってきた。国際会議室改装の件、オンライン会議のための機器類の選別と発注など、片付けなければならない仕事が重なってきている。総務課は、何でも屋だから、一つ一つ片付けるしかない。

富永は、SDGsの情報集めのために、本屋に行ったり、図書館を覗いたりした。主に、WEBからの情報が役に立った。細かいことは気にせず、概要が分かるようにまとめた。

三日後に、富永は、レポート用紙三枚を持って、課長に報告しに行った。

「会議室で聞こう。大野君と島田さんも同席しなさい」

「そもそも、SDGsとは何だ?」(課長)

「SDGsは、持続可能な開発目標の略です。二〇一五年に、国連で採択されたもので、二〇一六年から二〇三〇年の十五年間で達成すべき、世界共通の目標です」

「開発目標の内容は、貧困、健康と衛生、エネルギー、環境、平和、など十七種類の目標が掲げられています。貧困や飢餓を撲滅して、誰一人取り残さないことを目標とする概念です」

「民間企業に何かメリットがあるのか?」(課長)

「企業がSDGsに取り組むことで、企業イメージが高まり、新たなビジネスチャンスの創出も期待できる、と言われています」

「日本企業でSDGsに積極的に取り組んでいる会社は、T社、K社、R社、などです。日本SDGs協会には、すでに千二百社以上が会員登録をしているそうです」

「具体的に各職場は何をすればいいのか?」(課長)

「職場の取り組み事例としては、ペーパーレス化、残業時間の削減、用水使用量の削減、テレワークの推進、ハラスメント教育の実施、環境にやさしい製品の利用、などがあります」

「当社の進め方としては、先ずは社長方針を発表します。次に、社内の推進チーム員を任命します。そして、各職場の推進委員の任命、外部コンサルタントと契約して社員教育をします」

「概要は理解した。富永君、社長伺書を上げてくれ。全社の推進担当は総務課になりそうだな」(課長)

富永は、SDGsの推進チームのメンバーに任命され、毎日残業が続く日々を過ごしている。

三か月前に約束した、三人で中華街探索をする件は、一回も実行していない。総務課員全員がいる前で公言したので、負い目があった。いろいろとない知恵を絞った。運よく、朝日交響楽団のチケット二枚を手に入れることができた。できれば、三枚欲しかったが二枚しか入手できなかった。島田さんか白川さんを招待しよう。できれば、白川さんがいいが……。

午後三時頃、富永は社内の飲料販売機のそばでコーヒーを飲んでいた。島田さんと白川さんが二人揃って通りかかった。