籤引きの結果、私は幸運を射止めた。我々は剣だけを帯びた軽武装で太守の館に向かった。

太守は豪華な衣装に身を包み、終始鷹揚な態度で我々を歓待した。見たこともない珍しい料理と酒がふるまわれた。

壮年の太守は今日手に入れた品物、つまり娘たちに満足したのだろう。私は初めて葡萄の酒を飲んだ。蜂蜜酒とは違う味で飽きることがない。絨毯の敷かれた床に寝そべる我々の前で薄物を纏(まと)っただけの踊り子たちが舞う。

しかし、私の目と心はこの館のどこかにいるイオアンナを探して部屋の周囲をさまよっていた。

深夜になり帰る時間になった。廊下を歩いていると中庭の向こう側の廊下の方で騒ぎがあった。太守の家来たちがベールで顔を覆っていない二人の娘を連れていこうとしていた。娘たちはどう見ても無駄な抵抗をしている。

抗った一人の娘の顔がこちらに向いた瞬間、私は凍り付いた。イオアンナだった。無意識に剣にかかった私の手を傍にいた大人が抑えていた。彼はまっすぐに私の目を見て、そして顔を左右に振った。再び目を向こうの廊下に移した時にはイオアンナの姿はなかった。

船に戻り、私は船べりに身体を預け暗い海を見つめた。涙が止まらなかった。

翌朝、船長と主だった大人たちが太守の館に昨夜の礼に赴いた。船長は北の海に生息する一角という鯨の牙を持っていった。船長が戻ってきた時に太守のサインのある通行証を手に入れていた。今後はサラセンの支配する港は無論のこと、その他の国の港でもより安全に商いができるはずだ。

その日の昼、船団は港を離れた。

【28日目/晴】

船は丸一日南に向かって走行した後、急に舳先を東に向けた。激しい潮流に乗り、一気にジブラルタルと呼ばれる狭い海峡を通過する。

ここからはかつてローマの海といわれた地中海に入るのだ。イルカと巨大な魚(初めて見る大型のマグロ)の群れがものすごい速度で船を追い越してゆく。

100年ほど前、サラセンの軍団はこの狭い海峡をアフリカ側からイスパニア側に一気に渡り、ゴート族の国を亡ぼしたのだった。

 

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