【前回記事を読む】積み込まれた“荷”は、拉致された若い娘たちだった。船員の1人がある娘に惚れてしまい…逃亡を図ったが見つかり、処刑が決まった

【24日目/晴】

3度目の星空を見た翌朝、我々はサラセンの港に入った。

この港に入る直前に私は衣替えをした。それまでのウールの下着とズボンをリネンのそれらに着替えた。

船が南に向かうにつれて気温が上がり始め、さすがに暑くなってきた。正装はその上に膝上まで覆う厚手の上着を着て腰に革のベルトを締める。

ベルトには剣を下げるし、時には小型の斧を挟むこともある。また、足元は気候にかかわらず軽くて丈夫なトナカイや海獣の革で作ったブーツでかためている。

ちなみに私は髪が肩まで伸びるまで切らない。若者は大体がそうしている。大人たちは全員髭を生やしているが、私はまだ少ししか生えてこないので髭は暫くお預けだ。

戦闘の際には上着の上に首から腰まで覆う鎖帷子を着け、頭には兜を被る。使用する武器は主に長剣や斧、人によっては棍棒をよく使う。但し、これは白兵戦になった場合でできれば避けるのが上策だ。我々の最良の武器は弓だ。

街の中心には非常に高い石造りの塔が立っている。船は石と木材で造られた頑丈な長い桟橋に停泊した。

もう1本ある桟橋には鮮やかな色彩の三角帆を持つ重厚な形のガレー船が2隻泊まっている。1隻の甲板の上には赤と黄の縞模様の派手なテントが設置されている。

このずんぐりした格好の船がいざ戦闘になった場合に我々にとってどれほどの脅威になるのだろうかとつい考えてしまう。

直ぐに頭にターバンと呼ぶ布を巻いたような帽子を被った港の役人がわずかな兵士を伴って桟橋にやってきた。

船長が通訳を伴い彼らのところに降りていく。船長と役人が大きな身振りを交えて話している。双方から微笑が浮かぶ。どうやら問題はなさそうだ。早速積んできた荷を下ろす。

我々の土地で取れた獣の毛皮はこの土地の王侯貴族にとって垂涎の的だ。それらの荷は次々と金貨やこの地の珍奇な産物と交換されていく。

最後に短い航海をともにした娘たちが船を降り始めた。彼女たちは商人の手に渡ることなく港の役人により太守の許に連れていかれる。あのイオアンナも。

急に、私の中で封印していた怒りとも悲しみとも違う気持ちがこみ上げてくる。心がかきむしられるようだ。娘たちの多くは太守のハレムに入るが、その前に選りすぐられた娘は都にあるスルタンの宮殿に上がることになる。

私はイオアンナの幸せをオーディンに祈ることしかできなかった。

(これから30年後、私はイオアンナと再会を果たすことになるが、この時は思いもよらないことだった)

我々はここでの取引で驚くほど多くの金貨と貴重な荷を得た。

夕方になり港の役人が再びやってきて船長に太守の言葉を伝えた。なんと我々は太守の館に招かれたのだ。半数が船に残り船と荷を守り、残りの半数が船長とともに太守の館に行くことになった。