今にして思うと、入所した当時はこれ以外には選択肢がなかった私でさえも、とても「大喜びでやって来た」という気持ちではありませんでした。少なからず「心外だ」という気持ちはありました。
体験入所(いわゆるお試し)皆無にて入所した私は、入所当日に施設内を見学しながら「ふうん。こういう感じか。やっぱりどこでも大差ない雰囲気だ」、よくよく見れば大違いだけど、その時は気が付く術(すべ)がありませんでした。何喰わぬ顔でした。
「あの人さえやってくれたら何事もなく日々を過ごせるのに」と言って頼りにしてたあの人(俺は見失ったあの人だけど)から説得されたから、仕方なくやって来た、自分はまだまだできる、なんて思いながら。……違いますね。
これ、何が起きてるかというと、大きな勘違いを起こしてしまっているのです(冷静に考えればわかること)。その勘違いの原因とは、現実に即した状況に目を向けたくはないのです。それは「身障者であることの自覚」を問われてるのかもしれません。その雰囲気を察知して大抵の人はその時だけは無口です(お喋り三昧の今と違って)。
表面上は「この状況を呑み込んでる」ように見せ掛けています。だけど本心は「自分はここにいなくてもいい人だ」と思っています。ステルス心外に捕捉されてしまった人に、いくら尋ねても本心で明確に答えてくれるはずがありません。爆撃されたのです。
本人でさえも気付いていないから、答える時の表情がつっけんどんになってしまうのも無理はありません。暴れようとも思ってないから、「別にぃ」と答えます。
つい先程の質問の繰り返しになりますが、この施設に暮らすのはどうですか?「うーん、どうって言われても」。生きやすいですか?「考えたことない」。過ごしやすいですか?「はぁ、まぁ」。何か困ってることはない?「別にない(本当はある)」。やってほしいことはどんなこと?「特にない(本当はある)」。不適切介護に相当すると思うことはない?「そんなことわからない」。
自分でもピンと来てないから、醒めた表情で。取り敢えず乱暴だけは回避して、穏やかな人に見られたいと、顔付きはこわばったままで沈黙します。
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