「さぁさぁ、それでは、どうぞ私よりも後ろにお下がりくださいませ」

颯爽と両手を上げ、陽も落ちた空へと懐中電灯を振る。空母のカタパルトデッキに立ち、戦闘機を誘導するかのような勇ましい姿であった。

「あれ?」

なにも起きる気配はない。

「あれ? あれ?」

今度は正面玄関へと向きなおり、なおもしつこく振りつづける。

「あれ? あれ? あれ?」

都合、六回ほどクエスチョンマークを点灯させた瞬間。

 

――ガッココン。

 

ようやく合図に応えてくれた模様で、橋のたもとにあるパトロールランプが点滅を始めると、大きく地面が揺れた。

「えっ、なになにっ、なにごとっすか」

富戸木は身を伏せ、四つん這いとなる。どこかへ隠れようかと探しているのか、しばしウロウロしたあと、結局は美羽の足元に擦り寄ってきた。

「はっはっはー。おもしろいでしょ。不審者が侵入をして来ないよう、出入りを終えると、こうして橋を上げるのです」

「ひぇー、びっくりしたー。毎回、上げ下げするんですか?」

「そうです。こうして普段は閉じていまして、外出の際だけ、係の者に頼んで橋を降ろしてもらう仕組みとなっています」

次いでもう一度、『ガコンッ』と、フックが外れる音とともに両脇にある滑車が軋んでいき、ゆっくり、ゆっくりとワイヤーが絞られていく。

屋敷の片側に建つ巨大クレーンが、大きくしなり、木製の橋を吊りあげていった。