【前回の記事を読む】葬儀場の対応に納得がいかない。「故人に対し、あまりにも失礼だ」と伝えると、忙しいから今日中に済ませたいと言われ…
第一章 爬虫類の棲む屋敷
「先ほど『もう誰も来ない』とおっしゃいましたが、あたしたちで最後ですか」
「昨日から大雪となりましたので、みなさまはあちらでお越しになられました」
高岡が指さす方向には、ゴムの履帯がついた雪上車が止まっている。
地元でも有名な富豪とのことなので、何百人と集まる、盛大な葬儀を予想していたが、せいぜい数人程度の小さな家族葬だとわかり、美羽はホッと胸をなでおろした。
「人数も少なそうですし、すぐに終わりそうですね」
その言葉を背中で聞いた高岡は、大きなため息をつく。後ろ姿であるも、深刻そうな表情を浮かべているのが伝わった。
「それはどうでしょうか……」
「ちがうのですか」
「代理の方ですので、正直にお話しをいたしますが、これから内輪でいさかいが始まるのは想像に難くありませんでして――」
どことなく奥歯にものが挟まった言いまわしであるも、これが精いっぱいなのであろう。
美羽自身も個人情報を扱う仕事に就いているので状況を察した。
「守秘義務がありますもんね。なんとなくわかりました」
「申しわけありません。はっきりとお伝えすることができなくて……」
やがて橋を渡りおえようとしたとき、先頭に立つ高岡は、探偵たちへと振りかえる。気を取りなおしたのか、明るい表情に戻ると、急に張りきり始めた。