【前回の記事を読む】万引きは何のサインだったのか――家に居場所がなく、義母との関係は悪化。ある日彼女は消息不明に。数時間後…

第一部 自閉症の世界への道

第二章 実践小学校障害児教育 おひさま学級(仮名)

年頃の好奇心 セクハラ

おひさま学級を担任していた時、盗癖以外にもトラブルというか、事件があった。それは今現在にもつながる問題だった。

おひさま学級の六年生に重度の知的障害のある男子生徒がいた。自分の名前六文字をひらがなで書くのがやっとだったが、それさえも一字抜けることが多かった。口頭では名前の六文字は言えたが吃音気味で、口をとがらせ、言葉を詰まらせながらしゃべった。同学年の通常学級との交流でも、大人しい性格だったのでいじめられることなく、面倒を見てもらっていた。愛嬌もあった。

しかし、さすがの彼もその時は口をとがらせて訴えてきた。六年生の男子数人がズボンを脱がせたというのだ。「えっ、交流学級の六年?」と詰問すると、目をさらに大きくして、ウン、ウンと頷いた。

何人いたか? 本当にズボンを下げたのか?を確認して状況を飲み込めた私は、交流学級に行き、担任に状況を説明し、彼に謝罪させるよう頼んだ。幸いおひさま学級と交流学級は良い関係を保っていたので、担任はすぐ理解してくれた。

数人の男子がおひさま学級に来て彼に謝った。彼はすぐに「いいよ」と言った。謝罪に来た男子たちも皆、素直だった。きっと思春期になり、第二次性徴が始まって体毛や性器、陰毛が変化して悩み、興味を持ち、他人もそうなのか? おひさま学級の彼もそうなのか?と検閲の標的にされたのだろう。

拒否できない、言いなりになる、など知的障害や自閉症の子どもたちの傾向を療育する側は念頭に入れておく必要がある。かれらはセクシャルハラスメントと常に隣り合わせにある。被害者だけでなく加害者になる可能性もある。

この経験は開業後のスタッフの心構えの役に立った。

スタッフには、指導中は常に子ども、特に年頃の男子と適切な距離を保つよう意識させた。特に長い髪の毛が好きで、触ったり匂いを嗅ごうとして誤解されることが多いので、長い髪のスタッフは指導の時はきちんと髪を結び、子どもが容易に髪の毛に触れないようにした。

髪の毛は特に性ホルモンが強く感じられる部位なのであろう。当時はセクハラなどと言わなかったが、障害児者のセクハラ問題は今現在も続く問題である。