「はい、鍬下です。えっ……」
彼の顔面が一瞬で真っ青になった。
「分かりました。すぐに行きます」
彼が電話を切ると、麻利衣が不安げな様子で訊いた。
「何かあったんですか?」
「勾留中の羽牟さんが留置場で亡くなった。今から行ってくる」
そう言うと鍬下は慌ただしく部屋を出て行った。新宿署に着くと、署員が先に立って留置場に案内してくれた。
「こちらです」
署員の視線の先を辿ると、そこには無残な羽牟の死体が居室の中に横たわっていた。彼は仰向けになって目と口を大きく開けて天井を見つめている格好だったが、その眼は焼き魚のように真っ白になっており、顔面は膨張し、皮膚は白くふやけて容易に羽牟と識別することはできなかった。中では2人の鑑識が熱心に写真を撮影していた。
「一体何でこんなことに」
その場にいた留置担当官が答えた。
「最後に会った時は私と言葉を交わして元気そうでした。5分程して戻ってきたら、もうこうなっていたんです。その時には全身から湯気が上っていて、熱くて触れませんでした。室内には火気もありませんし、何が起きたのか全く分かりません」
鍬下の眼に羽牟の死体の傍らに置かれている一枚の紙が目に留まった。
「何か書き残していたんですか?」
「はい。最後に話をした時、『大事なことを思い出したので、忘れないように書き残しておきたい』と言ったので、紙と鉛筆を渡したんです」
「すみません、それ、見せてもらっていいですか」
鍬下が鑑識の一人に声をかけると、彼は紙を持ってきて見せた。そこには「古葉月渚(こばるな)」と書かれていた。
「古葉月渚……ありがとうございます」
鍬下は改めて変わり果てた羽牟の顔を見た。
「密室での殺人……まさかこのこと……」
「サイコ2――死の予言者」終わり。「サイコ3――奇跡の手」に続く。
「『超能力探偵 河原賽子』新章連載記念ピックアップ」の次回更新は5月11日(月)、20時の予定です。
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「電子レンジでチン」されたような最期…皮膚は白くふやけ、膨張した顔面。わずか5分の間に起きた惨事だった。
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「実力不足」と家庭教師をクビになった日、道で男とぶつかって眼鏡を破損。さらに顔に飛んできた紙には、信じられない悪口が…