「早川さんは実家暮らしそれとも一人?」
「実家です」
「早川さんは実家から通ってるんだ。いきなり実家まで送っても大丈夫?」
「心配しなくても大丈夫ですよ。ほんの家の先で降ろしてもらいますから」
瞳は英介の肩に寄り添いながら笑顔で答えた。
「わかりました。ではそうしましょう」
英介はとりあえずホッとした。
それから二人はいろんな話をして盛り上がった。その後、タクシーは成城の住宅街に入り瞳が指示した場所で停まった。
「今日はありがとうございました。それから私にとって忘れられない日になりました」
瞳はずっと握っていた手を離し、笑顔でタクシーを降りた。英介は久しぶりに新鮮な感じがした。ドアが閉まりタクシーは動き出した。瞳は笑顔で乗っている英介に手を振った。
瞳が降りた後のシートには、にわかに温もりが残っていた。英介は寂しさと同時に今までのことが竜宮城に行って戻ってきた浦島太郎のように夢のような感覚に捉われていた。
その後、着きましたよというタクシー運転手さんの声を聞いて自分のマンション前に到着したことに気が付いた。頭の中は瞳のことで一杯だった。
それを見ていたトムとジュウェルはとりあえず一日が無事終了してホッとしていた。
「あいつイケメンだしもっと自分に自信を持ったらいいのに何か変なんだよなー」
「うんわかる。トムが担当する人間のタイプとしては初めてだよね。だけどトムが言う通りどこかおかしいし、何だかほっとけないタイプなのよね……彼」
ジュウェルは腕組みしながら頷いていた。
「さあ、明日もあるし一旦俺らも帰るとするか」
「そうね帰ってミカエル様に報告よ」
二人は天使の国へ戻っていった。
―― 翌朝 ――、目が覚めた英介は何だか不思議な感覚に捉われていた。そして、いつも通り出社し、途中、同僚の三田博已(さんだひろみ)に声を掛けられた。
「おはよう、英介。昨日のセミナーどうだった。今後のこと真剣に考えておけよ。それで何か収穫はあったのか」
ちなみに三田は高校・大学が英介と一緒で、別部署の部長である。英介とは違い既に結婚していて子供が一人いる。
「英介、もしかしてまだ美咲ちゃんのことが原因で女性と付き合うことができないのか」
心配そうに英介を見ていた。
「もう、忘れたよ。年齢も年齢だし博已が心配するほど過去のことを引きずってなんかいられないよ。セミナーは非常に勉強になったよ。なんだけど……」
英介は昨日のことがまだ夢のようで話していいものかどうか迷っていた。
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