〈あの形は宇宙船? なぜこんな所に……。いったい何事だろう。どこかで見た気がする〉
透徹した白金の神々しい建造物を騒めく思いで仰いでいたとき、予兆もなくハッチが開いた。戦慄に駆られて後ずさると、内から現れたのは高貴な装束を纏った目映い麗容を象る存在だった。
かぐわしい香気を漂わせ、長いドレスの裾を水晶の大地に曳き、威容を湛えて歩み寄ってくる。長身にして気品ある麗人の瞳には明るい異彩がきらりと閃き、端正な顔貌と清艶な肌は真珠色に潤っていた。
薄紅と黄を織り成す絶妙な宮廷式装束は、純金やガーネット、トパーズを鏤め、その輝きは織り目を流れて煌く天河のようだ。光艶に富む美麗なドレスは、ジュランに悠遠の郷愁を呼び起こし、どういうわけか強く心を惹いた。
高貴な身分であることは一目にして明らかだった。どことなく親しげな魅惑の麗人は白金の靴先を覗かせながらロングドレスを曳き、語りかけてきた。
「はじめまして、ジュラン」
名を呼ばれた衝撃に全身をざわめかせ、朦朧とする頭を傾げた。
「はじめまして……。なぜ私の名前を?」
「あなたのことは兄からよく聞いているわ」
その声は、星辰がまたたき合う謎のささやきに似ていた。
「お兄さんってどなたです?」
「兄の名はロイセル」
ジュランはその名に無意識の深層が疼き、得体の知れぬ親近を覚えたが、思い当たる節はなかった。
「わたしはリフィエラよ」
当惑するジュランに投げかけられたリフィエラの無垢な微笑は、夜明け前の星雲に一条の光が差し込むように、暁の希望をほのめかせていた。その優美に心をさらわれ、ジュランは声を詰まらせた。
「あなたの閉ざされた過去を蘇らせる時が訪れたわね」
快晴の空を抱いた湖水の如く冴えるリフィエラの青瞳は、解き明かせない神秘を映している。
次回更新は5月15日(金)、7時の予定です。
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