朦朧と幻想をなぞりつつ、落下する事象の不思議を問いかけたが、答える者がいるわけもなく、今となってはどうでもよかった。ただ懐かしく安らかな母性の如き地球の懐に抱かれ、休息したかった。あらゆる煩いから解き放たれ、彼女はこのまま永遠の眠りにつきたいと思った。
渦が止まった。
〈私はどうなったの?〉
沼に落ちたはずだが、服には泥の痕跡ひとつ見当たらない。心地よい束の間の眠りから覚めた彼女は、開かれた透明な樹脂状のカプセルに横たわっていた。起き上がって辺りを見回すと、静謐な明るい空間が広がっていた。
〈ここはどこ?〉
天井の表層は定かに見えないほど上空にある。彼女は広大無辺な空洞の只中にいた。ごつごつした壁面の不気味な洞窟とはかけ離れている。淀みなく重なる土の層は、心を惹く色鮮やかさだ。天然石の石柱群が遠くにそびえ、幻光を煌めかせている。
彼女は厚い水晶の床の上にいた。その下には湖が澄み渡り、清水が滔々と流れていた。驚いたことに、数メートル離れた透き通る地盤に巨大な海月の幻象と見まがう滑らかでつややかな半球状の建造物があった。
表面は透明で、蛍光石の発光にも似た玲瓏の光が明滅し、円の中心から上方へ太陽さながらの強烈な光が放たれている。空洞と湖はその光線により、真昼の明るさに保たれていた。
現世を超えた壮麗な光景を目の当たりにし、彼女は夢を見ているのか、それとも彼岸へ至ってしまったのかと恐れた。沼の入り口で聴いた超常の音色が再び流れてきた。遙かな宇宙の響きを思わせる澄明な旋律だ。
〈昔どこかで聞いたことがある〉
その音楽には奇妙な懐かしさがあり、彼女は不思議な訴求力に触れた。