俳句・短歌 句集 母娘 2020.10.05 句集「地雷の如く」より三句 地雷の如く 【第19回】 馬場 美那子 母ひとり、娘ひとり、恋たくさん。 「おひとりさま」とその母の13年を綴るドラマティック川柳句集。 自由奔放にたくさんの恋をしてきた「おひとりさま」な娘。たったひとりの肉親である母は、夫に先立たれて長かった。 ほかに身寄りのない二人なのに、喧嘩して、諦めて、また喧嘩して。恋はすれども、母は捨てられぬ。母への情愛と異性への恋心との狭間で揺れる心情が、おかしみと哀しみを込めながら五七五の17音字に込められた「絆」の物語。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 薄情や死はそっけなく固くなり おじぎ草みんな心が揺れている 誕生日が来る度感謝しています
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『赤い大河』 【第5回】 塚本 正巳 もしかして私と彼を別れさせた自称間男は、男ではなく、女かも?ある人物が思い浮かび… 「ねえ、今どこにいるの。雹がすごい音を立てて降っているんだけど、そっちは?」冬輝は一言、ああ、とだけ答えて電話を切った。同じ雹の音を聞く距離にいながら、同じ子の親でありながら、この人とはもう二度と会うことはない。冬の夜明けを思わせる鋭利な確信が、凍えた心に深々と突き刺さった。何日も部屋に閉じこもり、冬輝をたぶらかした悪意の出所を探し求めた。店内に携帯電話を持ち込んだことはないので、自称間男が過去…