「泌尿器科医の頃にももちろんパーキンソン病の患者は診ていました。排尿困難を訴える方が多かったですね」
「それは頼もしい。おしっこが出ずに腹部が張って尿閉になる患者も少なくありません。真鍋先生の力が必要な患者は、きっとたくさんいますよ」
伊吹は、精一杯の気遣いと本音を込めて言葉を選んだ。お世辞には聞こえない程度に。それでもその言葉の奥には、自らの残された時間への焦りと、真鍋先生にも常勤になってもらって、未来を託したいという切実な思いが込められていた。
だが、それも口にすることはない。ただ静かに、彼女が在宅医療に興味を持ち続けてくれることを、心から願っていた。
今日は午後から、胸部疾患中央病院に伊吹自身が受診する日である。クライオバイオプシーという検査入院をして、肺を少し切除した病理検査の結果がわかる日である。この病理結果で予後がわかるのである。
昔は、検査にもかかわらず外科的に切除したらしいが、今は内視鏡でやる検査に相当する。ある程度のリスクと切除後の病状の急性増悪があると聞いていたので、不安ではあったが、特に問題なく終了した。診療所職員には、事務長にだけ本当のことを伝えたが、他の職員には、旅行と伝えている。
その結果で、最悪の結果は肺線維症(特発性間質性肺炎)という診断名である。難病中の難病で、がんよりも予後は悪いと言われており、治療法は確立されておらず、若ければ肺移植の適応であり、50%の確率で生命予後が2年である。
しかも肺がん合併の確率も高く悲惨な予後の病気である。一方過敏性肺臓炎や膠原病による変化であると病理結果が出れば、一挙に予後は大きく変わる。
原因疾患の治療法はすでに多くの方法があり、それが奏功すれば、生命予後の延長は可能である。
その結果が今日わかるのである。
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