その一瞬で、いろんなことが頭を駆け巡り、これから私は結婚し妻になり、もしかしたら母親になる、ということを強く意識した。
期待、希望、漠然とした不安、いろんなものがあの一瞬で駆け巡った。
一樹となら大丈夫かもしれない。
この人とならと思える相手は、後にも先にも一樹以外にいない。
最後その答えに辿り着いた時、私は一樹から指輪を受け取り「はい」と返事をした。普通ならこういう時、嬉しくて涙ぐんだりするのかもしれないが、その時の私は期待と不安が同じ量ずつ攻めぎ合いとても複雑だった。
本当にこの決断は、この選択は、私にとって間違いではないのだろうかとどうしても思わずにはいられなかった。
そして、交際を始めた日付に婚姻届を出し夫婦となった。
正直14年も一緒にいたのもあって、今日からは夫婦と言われてもすでに一緒に暮らしているし互いにいい意味で現実感や実感はなかった。
そして、どうしても心の奥底にある《子どもがほしい》という、どうしようもない願望を打ち消すことはできなかった。
夏に結婚しその年の冬に挙式をしたが、年を越してすぐの頃、私は妊娠した。
「大人の恋愛ピックアップ記事」の次回更新は4月29日(水)、12時の予定です。
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