【前回の記事を読む】「試合が終わったら、2人だけでゆっくり続きをやろうや」万引きする現場を目撃されてから強請られるようになり…

Chapter2 HERO

財津の場合、さすがに恐れたりしないものの余程頭に来たのか、それまでの冷静沈着なパスワークが乱れ、無謀なドリブルや力任せのキックが目立ち始めた。

残り時間が十分を切った頃、ハーフ・ライン付近で相手ボールをカットした恭平は、左ウイングの丸橋に長いパスを出し、右コーナー方向にオーバーラップして上がった。

パスを受けた俊足の丸橋は相手バックスを振り切り、ドリブルで二十メートル程進み並走する高宮にパスを繋いだ。

高宮は右足のアウト・サイドでボールを内側に振るようにトラップしながらマークを外し、スピードを殺したロビング・ボールを上げた。

ボールは走り込んだ恭平の目の前二、三メートルの所に落下し、バウンドした。

弾むボールを胸で前に落とそうと大きく踏み出した恭平は、短距離ランナーがゴールのテープを切るように、懸命に胸を突き出した。

ノーマークの恭平の出現に虚を衝かれた財津が、無理な体勢から上半身を思い切り倒して振り回した足は、ボールを掠ることなく恭平の胸を直撃した。