流石に夏の日差しは、忠賢だけではなく、湯で洗った百足の小袖や腰布、褶をも見事に干していた。

誰一人観ている訳でもないので、炎天下、腰下が隠れる程度のモノだけを身に着け、刺殺した猪が他の獣の餌に変わらぬ様、湯を引く為に予め試掘してあった穴の一つに、骸を埋設した後、二人は、再度、暫し、そのまま湯船に浸かり、身に付いた汚れや、汗を互いに落とし合い、互いの裸体をじっくりと鑑賞する様に、湯船の中で、丁度良く焼けた肉を平らげていた。

二人は、満足そうな表情を浮かべ乍ら、湯から上がり、洗濯され、陽の香りが漂う衣に着替え、何事も無かったか、の如く家路についた。

今日の顚末を、全て包み隠さずマムシに話す必要は無かったが、猪に襲われ、修理して貰った太刀を使った事だけは、マムシに話し、太刀の具合を検分してもらった忠賢は、マムシ殊(こと)、村主三太夫が俯いたまま、何も話さぬ事が、少し、空恐ろしかった。

マムシは、太刀の目釘を抜き、柄から刀身を外し、太刀を後ろからまじまじと眺めた。そして「問題は、ないと存じます」と言うと新しい目釘で、太刀を元に戻し鞘に収め忠賢に戻した。

マムシには、真夏に猪に襲われて帰ってきた若い二人が、全く汗臭くない事から、何が二人にあったのか、大凡の見当は付いていたが、それを咎める気はなかった。

只、娘には新たに、忠賢が夜這いを掛け易くする為の母屋と廊下で繫がる別棟を設え、そこに新たな専用の寝所を設えねばならない、と考えていた。

今の彼女は、父と同じ母屋の下に寝所が設けられていた。そしてこの金は、高明様に求めようと算段していた。