〈8〉
翌年、2004年――。ナイスホープに神風が吹いた。
派遣法が改正されたのだ。これにより、製造業への派遣が解禁となり、すでに派遣が許可されていた業種でも派遣期間が大幅に延びて、人材派遣のニーズが爆発的に広がった。
このチャンスをカリスマ張目が見逃すはずがない。
専務の山上が、天下統一を図るべく「かかれーっ!!」と全軍に号令をかける。
常務の崎野は、派遣先の業種・業態を緻密に分析し、営業先リストをこれまでの5倍に増やした。
そして事業本部長の北井を先頭に、全国の支店が一斉に営業攻勢をかけ、市場を切り拓いていく。規制緩和の波に乗ったナイスホープは、竜巻のような勢いで新規契約を獲得していった。
製造工場、倉庫人員などのブルーカラーから、イベント・販売スタッフのオレンジカラー、さらには事務・オフィスワークといったホワイトカラーに至るまで。あらゆる職域に派遣の手を広げ、ナイスホープは火がついたように勢いを増していく。
そして、2004年3月。ついに、ナイスホープは念願の東証一部上場を果たした。
3年前の新春営業会議で、社長・張目が宣言していた言葉。
「2004年に、東証一部に上場するぞ」
それを現実のものにしたのだ。3か月後の6月、ナイスホープの社員総会が開かれた。
東証一部上場を祝う盛大な式典。恒例の売上トップの発表が始まる。
(今回は誰が天下を取るか……)
ざわつく会場。そこに集まっている社員は、日々激務に耐える猛者(もさ)ばかり。
売上トップを取れば、昇格、昇給、賞与、名誉、すべてが手に入る。
静まり返る会場に、司会の声が響いた。
「発表します。今回、売上達成率ナンバーワンに輝いたのは……」
息を呑む会場。
「静岡支店の桐谷 悟さんです! おめでとうございます!」
(えっ! 俺!?)
桐谷は心臓が飛び出そうになった。まさか自分が全国1位を取るなんて思いもしない。
驚きのあまり数秒、立ち上がることができなかった。だが、周りの拍手に後押しされ、桐谷はようやくステージに向かった。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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