最近、知人の家に行った帰りに、「お土産をやろう」と小さな鉢植えの「フーラン(風蘭)」をもらいました。初めて見る小さくて可愛い花です。香りもいいというので嗅いでみました。
甘い、いい香りです。うん? いつかどこかで嗅いだことがある懐かしい匂いです。
「そうだ!」
遠い昔、子供のころ、てっちゃんが持っていた匂いガラスだ!と、当時の記憶がよみがえってきました。戦時中、墜落したアメリカ軍の飛行機か日本軍の飛行機かの風防ガラスの破片を拾ってきて、それを板などでこすりつけて匂いを嗅ぐと、甘い香りがしました。
その風防ガラスを私たちは「匂いガラス」と呼んでいました。知人がくれたフーランの花が遠い昔の記憶を呼び起こしてくれました。
隣の家の兄ちゃんはメジロ獲りが上手でした。鳥籠におとりのメジロを入れ、鳴き声でおびき寄せ、鳥もちを付けた小枝に止まらせて捕獲するのです。メジロがたくさんいる近所のお宮の森に、私も一緒に連れていってもらいました。その兄ちゃんにメジロを獲るスリルと、ときめきを教えてもらいました。
町にはろくろ屋というところがあって、そこでは木工旋盤でコマを作っていました。ベアリングの球を外したリングを持っていき、それに合わせたコマを作ってもらいます。大小のベアリングに合わせたコマで、よく友達と遊んでいました。
近くの漁師さんの子供で船を作るのが上手な子もいました。といっても、お父さんと一緒に作るのですが、「うたせ船」という船の模型を作っていました。手作りながら帆も本物のようで、とても優雅に見えました。
当時、「うたせ船」は山国川河口に数艘ありました。エンジンがなく、帆に風を受けて走り、底引き網を引きながら漁をするのです。白い帆に風をはらませて海面をゆっくりと進む姿は、子供心にもかっこいいなあと思ったものです。
最近では子供たちが自分で竹や紙、糸などを使っておもちゃなどを手作りするということがほとんどなくなりました。私の孫にはものづくりの楽しさを教えたいと思っています。ゲームなどで遊んでばかりで、外で近所のお兄ちゃんやお姉ちゃんたちと遊ぶ姿をあまり見かけなくなったことは少し残念に思います。