人類滅亡の危機を回避し、未来への閉塞感を打破するために、今われわれがなすべきことは、「大きな自分」の働きにより「小さな自分」の暴走を防ぐことである。人生のすべての難問を解決するために、すべての人間が心の奥にもっている「大きな自分」に目覚めなければならない。これは人生の究極の真理であると思う。
はしがき
この作品は、本来すべての人間に備わっている「大きな自分」と「小さな自分」について、その本質を明らかにするために書きました。
仏教では「大きな自分」のことを「大我」、「小さな自分」のことを「小我」と呼びますが、「大きな自分」「小さな自分」と呼んだ方がやわらかな響きがありますので、これを本書のタイトルとし、本文でもこの用語を使いました。「大きな自分」には、「純粋経験」「セルフ」「道(タオ)」などさまざまな別の呼び方があることを後ほど示します。
また、「大きな自分」「小さな自分」という呼び方は、池田晶子著の『14歳からの哲学―考えるための教科書』で使われていた「大きい方の自分」「小さい方の自分」という表現をヒントにさせていただきました。
私の専門は物性物理学の理論研究で、大阪大学、東北大学、東京大学に奉職した後、2003年に東京大学物性研究所教授を定年退職しました。物理学は宗教・哲学とは対極にある学問分野で、物理学が物質世界の成り立ちを研究するのに対して、宗教や哲学は人間の精神世界を対象としています。