七月二十四日(火)

この日はめずらしく、夫は帰った時は静かだったが、「風邪薬はないか?」と言ってきたので渡すと、その薬を思いっきり投げて捨てた。この薬ではなかったのかと思い、別の薬を探していると、カップ麵と箱のへこんだ風邪薬を持って「すみません」と。

そしてリビングを出ると、「いい気なもんや!」と言いながら、階段を昇っていった。

この夜、私はちょっと試してみようかと、寝室の隣の部屋にデジタルカメラを動画モードでセットしてみた。

録画ボタンを押して、そのまま放置する。ボタンを押す時の心臓の鼓動が半端なく、緊張で手足も震えていたが……。翌日、夫が出勤してから確認してみると、夫の怒鳴り声がちゃんと録音されていた。

壁を挟んでいるにもかかわらず、思った以上に鮮明にとれていた。この状況を口で説明しても現実味があまり感じられないだろうが、これなら生々しい証拠になる。しかも日付が入るので、いつ撮ったかも一目瞭然だ。

私はこの日から事あるごとに、いろいろな場所でデジタルカメラを使って、夫の音声を残すようになった。

八月三日(金)

顔に疲れが出ていたのかな……。

今日、仕事に行ったら上司に言われた。

「何かあるんじゃないのか? 困っていることがあったら言ったほうがいい」

それで思い切って夫のことを話すと、一刻も早く家を出たほうがいいとアドバイスされた。帰宅してから、ずっと家にいた佳奈美に、今朝、私が出勤してからの夫の様子を聞くと、やはり少し荒れていたが、時間になったら会社に行ったとのこと。

夜は十一時十一分と、めずらしく早く帰ってきて、玄関で靴を脱いで早々、怒鳴り声が響き渡る。

「いつまでここにいるの?」と佳奈美。「もう出ようか……」と私。明日にでも、市の女性センターに電話をかけて相談してみよう。

 

「夫 失格」の次回更新は4月12日(日)、20時の予定です。

▶この話の続きを読む
夫が2階に上がるたびに走る緊張感。少しずつ、少しずつ、荷物を運び出し、夫から離れる準備を進める…絶対に悟られてはいけない

▶『夫 失格』の連載を最初から読む
「お袋をいじめるのはやめろ!」デイサービスへの送り迎えさえしない夫に言われた。義母の介護はすべて私がやってるのに。

👉『夫 失格』連載記事一覧はこちら