「会社として何を約束しているのかわかりませんが、実態が見えない状況でとやかく言うのも無理があります。吉本所長、ところで、うちの渡辺部長はこの件を承知していますか」

「いや、まだ話をしていないよ。このあと話を通すつもりだ」

「会社の危機とあれば、事情を調査することは止むを得ませんが、担当業務の指示もしなければならないので、午前中は動けません。午後なら、らくらく乳業に出かけられるので、調整してください」

「わかった。漆原君、らくらく乳業に連絡して午後伺うことにしてくれ。私も同行する」

「はい。承知しました」

川本は、午前中かけて、しばらくの担当業務を課長代理に任せるための相談をした。

この課長代理は、川本の右腕でもあり、日ごろから川本の活動を見ているので、しばらくは問題ないと判断した。

川本は、昼食をとることもなく、東京の本社に向かった。そこには、今朝会った川辺事業部長や漆原課長と、もう一人背の高い青年がいた。この青年は、亀山という昨年入社した工場の担当者であった。

実は、このプロジェクトは客先がプログラムを製作するということで、客先が要求しているサポートソフトウェアの提供を外注しており、そのフォローと簡単なハードウェアの製作手配の担当として新人の亀山を充てたということがわかった。要するに、簡単なシステムに経験のあるシステムエンジニアを充てる必要がないと上司は判断したらしい。

川辺事業部長、漆原課長、亀山と川本は、午後2時過ぎに品川に近いらくらく乳業の本社を訪ねた。対応に出たのは、らくらく乳業開発部の竹本次長と4人の担当者であった。担当者は、光浦主任、吉田、長谷川、吉住と紹介された。

それから1時間、らくらく乳業の担当するプログラムが調整できないということを光浦主任から延々と文句を言われた。

なんで客先の担当のプログラムが調整できないのか、段々わかってきた。しかし、あまりにも一方的な攻撃で、こちらには何も反論できる材料もなく、ただお伺いするだけになった。たぶん、川辺事業部長も同じことをこの数日聞かされてきたのだろうと想像できた。

竹本次長が口火を切った。

 

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