【前回の記事を読む】眼の不調を「加齢だから」と放置していませんか? そのままだと高血圧や糖尿病、心疾患などの全身疾患につながるかも…

第1章 「見え方」は人生の質を左右する

眼の見え方で変わるQOL(生活の質)

患者さんへの負担が小さい白内障手術

このようにQOLを求める考え方は、「無病息災」ではなく、多少病気があっても、無理なく社会生活を営み、人生を楽しめるという意味の「一病息災」「百病息災」という言葉に集約されているように感じます。

患者さんの心身への負担が軽い眼科治療では、治療とQOLを秤(はかり)にかける必要はまったくないといっても過言ではありません。特に白内障手術は症状を取り去る対症療法ではなく、病気を原因から治す根治療法であり、医療技術の進歩とともに患者さんへの負担は小さくなり、日帰りの手術はもはや一般的です。

眼科医の立場からは、眼がよく見えなくなってきたのに白内障手術をされない理由を見つけるほうが難しく、「歳だから眼が見えにくくてもしょうがない」と、あきらめないでいただきたいという一言に尽きます。

QOV(視覚の質)という考え方

のちに詳述しますが、老眼や白内障など加齢性の眼の病気は、高齢になれば誰も避けることはできません。

これを放置しておくのと、積極的に改善・治療するのとでは、のちの人生に天と地ほどの違いが生まれます。

ここまで書いてきたとおり、眼の障害は、見えないことによる行動の制限、活動性の低下による体力の衰え、生活機能の低下、日常的な生活のなかでのリスクの増大、認知機能の低下、精神性疾患の発症、さらには寿命にいたるまで、直接間接にさまざまな弊害(へいがい)をもたらし、QOLを損ないます。

私たち眼科医がQОV(Quality of Vision:視覚の質)と呼んでいる「見る」ことの質は、QOLを下支えする重要なものなのです。

不自由を我慢し、さまざまなリスクを抱えたまま暮らす必要があるでしょうか。白内障が進行する前にきちんとした治療を受ければ、残りの人生の質は驚くほど改善されます。今や歳をとっても多くの方がアクティブに人生を楽しむ時代。少しでもよく見える目で、より長く、快適に暮らしていただきたいと思います。

見えないことによるストレス要因が排除できれば、それだけで日常生活は快適になるでしょう。さらには旅行やスポーツなどレジャーを楽しむこともできます。眼がよく見えなければできない些細(ささい)なこと、たとえば、お孫さんの生き生きとした表情がよく見える、これだけでも人生が豊かになると思いませんか?