QOVの向上は眼科医次第

QOL(生活の質)の前提となっているQОV(視覚の質)について、もう一歩踏み込んで考えてみます。それは、見えればよいのかということです。

白内障は視野が濁る病気ですから、まず求められるのは視野をクリアにすること。

従来の白内障治療では、濁りを除去して単焦点眼内レンズを入れます。近視や乱視、老眼などはそのままで、「視野が明るくなること」が最重要課題、「あとは眼鏡をかけて矯正」という考え方で行われてきました。近視や乱視、老眼も矯正できる多焦点眼内レンズがなかったのですから、これはしょうがありません。

おおざっぱにいえば、近距離か遠距離のどちらかにしか焦点が合わないのが単焦点眼内レンズ、その両方あるいは中間距離にも焦点を合わせることができるのが多焦点眼内レンズです。

そして、多焦点眼内レンズが普及しつつある今でも、残念なことに「視野が明るくなればよい」という考え方をする眼科医は少なくないようです。これは治療スキル以前の白内障手術に対する考え方の問題です。

よく考えれば、単焦点眼内レンズを選択した場合でも、患者さんの満足度は違ってきます。たとえば、ふだん車の運転をせず、家庭にいる主婦の方で、老眼と白内障がある場合を考えてみます。白内障で視野が濁っているうえ、老眼で近くも遠くも見えにくい状態です。この方の眼を遠くまで見えるようにする必要があるでしょうか?

テレビは視力0.4~0.6もあれば見えます。家事をしたり、新聞を読んだりすることが裸眼でできれば、生活上ほとんど支障がありません。つまり、濁りを除去したうえで軽い近視の状態に矯正すれば、眼鏡はほとんどいらないわけです。

そういう発想がなく手術をしてしまうと、遠くは見えるものの、近くを見るときに眼鏡が必要になります。前よりはましとはいえ、せっかく手術したのに老眼鏡がなければ日常生活は不便なままです。

多焦点眼内レンズを使った白内障手術は、近視や乱視、老眼を同時に矯正できる画期的な治療法ですが、肝心なのは患者さんの日常の生活に合った治し方をすることです。眼鏡は杖などと同じ矯正補装具。使わなくて済むなら、それに越したことはありませんし、治療によって外すことができるものです。

歳をとったら老眼鏡は当たり前? じつはそうではありません。眼鏡のない生活ができる眼科治療があることを、ぜひ知っていただきたいと思います。

 

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