“一流の布陣”のはずが“最悪の布陣”になった

遺言執行者の銀行に任せきれないと判断したМさんは、テレビにも出演する有名な弁護士、相続に強いと評判の税理士にも依頼し、あらたに専門家チームを編成。銀行の失敗をカバーするべく、“一流の布陣”を組んだのでした。

「これだけのメンバーなら間違いない」

Mさんはそう考えていました。しかし、ここに落とし穴があったのです。

弁護士はMさんの意向を最優先し、妹さんの言い分には耳を貸しませんでした。妹さんは亡き父親から「自宅の一部は妹に残す」といった話を生前に聞いていたにもかかわらず、弁護士に伝えても受け入れてもらえず、それを完全に無視するかのような進め方をされたことで不信感を募らせました。さらに悪かったのは弁護士の態度でした。

「これは法的に問題ありません」

「こちらの主張が正当ですから、今から変更できません」

まるで争いを誘発するかのような言動。押しの強さが目立ち、高圧的な言い回しもあったため、妹さんはついに「お兄さんは私を排除するために弁護士を使っているのでは」と疑念を持つようになったのです。

結果、妹さんは自分の主張を聞いてくれる別の弁護士を立てて応戦。ここからM家は、母親とMさんvs妹さんの2つに分かれて“弁護士同士による代理戦争”となったのでした。

家族の絆が崩れ、体調を崩すまでに

こうして、かつては仲の良かった兄妹は完全に決裂。母親は板挟みにされ、精神的に疲弊。Mさん自身も、弁護士との連携や書類作成、妹側との対立によって心労が重なり、ついには鬱症状が現れるようになりました。

「兄妹でこんなことになるなんて……父も草葉の陰で泣いていると思います」

Mさんは言葉少なにそう語っていました。妹さんもまた同様に体調を崩し、薬が手放せない日常を過ごすようになってしまったのです。

「こんなはずじゃなかったのに……」

妹さんは母親にも、Мさんにも心を閉ざしてしまい、話をすることもできなくなりました。悔やんでも悔やみきれないとMさんは今でも後悔しているといいます。

相続実務士®が提案した軌道修正案

こうした状況に至り、Mさんが最後の頼みとして駆け込んでこられたのが、私たち相続実務士でした。私たちは、全体像を整理し、公平性を保ちながら、できる改善策を提案して、合意が得られる分割案、節税案を考えました。

Mさんと妹さんはすでに直接会話すらできない状態だったため、私たちが妹さん側の弁護士に提案して理解と協力を得るようにしました。

 

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