【前回記事を読む】相続を成功させるには? 「資格者に依頼すれば完璧」は思い込み。特に不動産関連では、財産全体を把握した〇〇が不可欠!
第1章 “任せたのに失敗!”という相続のリアル
――弁護士・税理士・銀行任せの落とし穴
最初のこの章では、弁護士・税理士・銀行といった、相続の専門家に任せたにもかかわらず「失敗した」「後悔した」という実例を2例取り上げて、失敗の原因はどこにあったのかを探ってみます。そして、失敗の一歩手前だったところを、どのように軌道修正したのかご説明します。
相続のリアルな現状には「失敗」もあります。それらを教訓にして「成功するために必要なこと」も知ることができます。
実例1 弁護士が争いを誘発、家族関係が崩壊したMさん
「先生、もうどうしていいかわかりません……助けてください」
そう言って、日経新聞の広告を手にした1人の男性が私のオフィスに来られたのは今から15年前のことです。ひどく疲れた表情のその方は、当時50代。父親から継いだ資産管理会社の代表を務めているMさんでした。
彼の訴えはこうです。「父が亡くなって相続の手続きを進めています。でも、遺言書に不備があり、手続きがまったく進まない。専門家に任せているはずなのに事態は悪化する一方で、家族がバラバラになってしまいました。なんとか立て直したいんです」
Mさんが持参された資料を見て、私はすぐにМさんが困っている理由が理解できました。父親は公正証書遺言を作成しており、円満に手続きができるはずだったのに、「相続手続きの失敗」と「専門家たちの無配慮」により、すでに修復できないほどの事態を引き起こしていたのです。
銀行の遺言書ミスがすべてのはじまり
Mさんの父親は代々続く土地持ち地主の家系で「地域の名士」でした。東京郊外に広大な土地を所有しており、Mさんが13代目。自宅はなんと2000坪もあり、賃貸アパートや駐車場、貸宅地なども合わせると、相続財産の評価額は実に40億円を超える超資産家でした。
父親の希望でMさんは40代で公務員を辞め、家業である資産管理会社を継承。しかし、実務は古くからの従業員に任せきりで、不動産の管理や運営にはほとんど関与していなかったといいます。地元のロータリークラブや商工会の活動には積極的で、むしろ地域とのつながりに重きを置いていました。
そんなMさんの父親は、生前に都市銀行を通じて公正証書遺言を作成していました。遺言執行者はその都市銀行。家族も「遺言書があるなら安心」と信じて疑わなかったのです。
ところが、その遺言書には致命的なミスがありました。なんと、数カ所に及ぶ不動産の記載漏れがあったのです。遺言書が完全でなければ、銀行の遺言執行者といえども手続きを進めることができません。
その結果、相続人である母親、Mさん、妹さんの3人による遺産分割協議が必要になってしまったのです。