「さっきね、お姉さんと合同結婚式の話をしていたの。ねえ、マー君は何か考えている?」

「考えてはいるけどさ、その前に伝えておきたいことがある」

「結婚式に関することなの?」

「トシから電話で聞いたんだけど、僕たちの父さんが結婚を認めないとか言っているらしい」

「ホントなの! 初めてお会いした時には、そんな素振りをしていなかったよね」イケちゃんは、やや興奮している。

「渚ちゃん、ちょっと落ち着いてね。トシが言うには、勝手に自分たちだけで結婚式をしたことが不満だった……だから、その勢いで結婚そのものを反対したのかもって」

「なるほどね。そうだ、お姉さんが言っていたんだけど、マー君のお母さんと話がしたいそうよ。実は私も話がしたいの。私のことを知ってもらうためにね」

「ありがとう。その気持ちは嬉しいな。あのね、母さんが『渚ちゃんたちと一緒に父さんに会いに行きなさい』って言っていた……どうかな?」

「四人でお父様に会いに行くのか……大丈夫かな。その前に、お母様に会ったほうがいい?」

「先に父さんに会いに行こうよ。母さんからのアドバイスはもうもらっているんだから、母さんと会うのは急ぐ必要はない」

真彦の言葉に、イケちゃんは納得した。

「今度の日曜日に富山へ行こう。トシには僕が伝えておくから、渚ちゃんは渚さんに伝えてね」

「わかった、お姉さんに伝える。マー君の車で一緒に行こうね」

「うん。土曜日の夜に連絡する」

日曜日の午前8時頃、イケちゃんと真彦は車で出発した。富山駅でお姉さんを乗せて、津田家に着いたのは、正午を少し過ぎた頃だった。

「父さん、ただいま」真彦たちが玄関で声をかけると、俊彦が出迎えてくれた。すぐに真俊も玄関に現れた。その姿を見て、渚たちが順番に挨拶をする。

「こんにちは。白石渚です。ご無沙汰しています」

「こんにちは。池江渚です。おじゃまします」

「はい、こんにちは。正月以来だね。どうぞ、上がってください」

客間に入ると、真俊が真彦に問いかける。

「食事はどうした?」

「もう済ませたから気にしないで」

真彦がこたえると、俊彦が飲み物の支度(したく)を始めた。その様子を見て、真俊が冷蔵庫からケーキを出して皿にのせている。真彦が近づいてきて言った。

「あれっ、ケーキなんて、いつ買ったの?」

真彦に続いて、俊彦が真俊の顔を見て言った。

「父さん、なんだか嬉(うれ)しそうだな」

父親と息子たちの様子を、渚たちは黙って見ていた。

 

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