「さっきね、お姉さんと合同結婚式の話をしていたの。ねえ、マー君は何か考えている?」
「考えてはいるけどさ、その前に伝えておきたいことがある」
「結婚式に関することなの?」
「トシから電話で聞いたんだけど、僕たちの父さんが結婚を認めないとか言っているらしい」
「ホントなの! 初めてお会いした時には、そんな素振りをしていなかったよね」イケちゃんは、やや興奮している。
「渚ちゃん、ちょっと落ち着いてね。トシが言うには、勝手に自分たちだけで結婚式をしたことが不満だった……だから、その勢いで結婚そのものを反対したのかもって」
「なるほどね。そうだ、お姉さんが言っていたんだけど、マー君のお母さんと話がしたいそうよ。実は私も話がしたいの。私のことを知ってもらうためにね」
「ありがとう。その気持ちは嬉しいな。あのね、母さんが『渚ちゃんたちと一緒に父さんに会いに行きなさい』って言っていた……どうかな?」
「四人でお父様に会いに行くのか……大丈夫かな。その前に、お母様に会ったほうがいい?」
「先に父さんに会いに行こうよ。母さんからのアドバイスはもうもらっているんだから、母さんと会うのは急ぐ必要はない」
真彦の言葉に、イケちゃんは納得した。
「今度の日曜日に富山へ行こう。トシには僕が伝えておくから、渚ちゃんは渚さんに伝えてね」
「わかった、お姉さんに伝える。マー君の車で一緒に行こうね」
「うん。土曜日の夜に連絡する」
◇
日曜日の午前8時頃、イケちゃんと真彦は車で出発した。富山駅でお姉さんを乗せて、津田家に着いたのは、正午を少し過ぎた頃だった。
「父さん、ただいま」真彦たちが玄関で声をかけると、俊彦が出迎えてくれた。すぐに真俊も玄関に現れた。その姿を見て、渚たちが順番に挨拶をする。
「こんにちは。白石渚です。ご無沙汰しています」
「こんにちは。池江渚です。おじゃまします」
「はい、こんにちは。正月以来だね。どうぞ、上がってください」
客間に入ると、真俊が真彦に問いかける。
「食事はどうした?」
「もう済ませたから気にしないで」
真彦がこたえると、俊彦が飲み物の支度(したく)を始めた。その様子を見て、真俊が冷蔵庫からケーキを出して皿にのせている。真彦が近づいてきて言った。
「あれっ、ケーキなんて、いつ買ったの?」
真彦に続いて、俊彦が真俊の顔を見て言った。
「父さん、なんだか嬉(うれ)しそうだな」
父親と息子たちの様子を、渚たちは黙って見ていた。
👉『ふたりの渚 ~誓いの先に、新しい命が宿る~』連載記事一覧はこちら
【イチオシ記事】彼は私を強く抱きしめ、愛していると言った。私には夫も子どももいるのに…。それからおよそ30年、彼との不倫関係が始まる