【前回の記事を読む】反戦フォークを歌い「これでYMOは終わりです」と冗談を言うと、ブーイングの嵐に。キレた坂本龍一は「うるせえぞ馬鹿野郎!」と怒鳴り……
DiscI YMOバイオグラフィー
Track1. 突如出現した電子音の魔法
ブレイクしたYMO
6月16日のオリコンチャートでは
1位『増殖』
3位『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』
13位『パブリック・プレッシャー』
20位『イエロー・マジック・オーケストラ』
となんとトップ20の中にYMOすべてのアルバムが入るという快挙を達成する。
近田春夫は『増殖』ヒットの理由とサウンドの変化について、次のように推測している。
「彼らは、自分たちのファンにウンザリしてるんじゃないでしょうか?
(中略)ちゃんと音楽をやるマニュアルを身につけてしまった人間がそれを否定することなくアナーキーな態度をとると、こんな作品ができると言う見本のような作品です 1」
この型破りなアルバムに対する近田の評論の後半はまさにその後のYMOを予見していると言えよう。
しかし「自分たちのファンにウンザリしてる」という表現は違う。
YMOは〈ポップカルチャー〉の〈ポピュラー(大衆)〉という意味合いが大きくなりつつあることに「うんざり」ではなく、困惑を覚えたのではないか。
『パブリック・プレッシャー』以前までの彼らのファンはサブカルエリートであり、オシャレなものに敏感な人間に届く新たな音楽を目指していた。
〈ニューウェイヴ・ポップカルチャー=オシャレ/敏感〉である。
YMOはそこを目指して新たな音楽を創る場であり、さらには〈音楽のポップアート〉を具現化しようとしていた。
ところが、このときには不良学生も小学生もYMOを聴く、とてつもない〈マス〉となった。このことへの困惑だったと考える。