この理由は2点ある。
1点目はキャンティの営業が午前3時までであったこと。芸能人や有名人が羽目を外せる自由な店であり、政財界の大物がクラブ帰りにホステスを伴って入れる店であった。
2点目は、決してスノッブではなく、若者も入りやすい雰囲気で、有名人と分け隔てなく丁寧でくつろげる接客を行ったことである。
金のない学生には〈あるとき払いの催促なし〉で、低料金あるいは無償でサービスを提供し、金銭的に寛大だったのである。
数多くの文献に載っている常連客をざっと挙げると、作家では三島由紀夫、安部公房など、音楽家ならミッキー・カーチス、かまやつひろし、堺正章、荒井由実、細野晴臣、村井邦彦など、俳優では石原裕次郎、石坂浩二、加賀まりこ、大原麗子、勝新太郎など。
ほかの分野でも映画監督の黒澤明、画家の岡本太郎、球界からは長嶋茂雄など多岐にわたる。
また、芸能プロダクションや政財界で後に大物になる人物も若い頃からよく来ていた。
そう、細野も常連だったのである。細野がどういう経緯でキャンティに来るようになったのか、明確に示す文献はない。
しかし、細野の実家が港区白金という至近距離にあり、さまざまなミュージシャンが出入りするキャンティであったので、音楽業界で顔の広い細野がキャンティによくいたとしても何ら不思議はない。
常連の若者の代表格は荒井由実(ユーミン)である。中学生の頃から出入りしていた。
外国人セレブも多数頻繁に訪れている。英語、仏語、伊語に堪能な川添夫妻の人脈ともてなしあってのものであろう。その息子象郎ももちろん頻繁に顔を出していた。
1――村井邦彦、吉田俊宏『モンパルナス1934』
2――幕末の土佐藩士。大政奉還に尽力し、明治になると伊藤博文内閣の農商務大臣などを務める。正二位勲一等伯爵。
次回更新は4月1日(水)、20時の予定です。
【イチオシ記事】彼は私を強く抱きしめ、愛していると言った。私には夫も子どももいるのに…。それからおよそ30年、彼との不倫関係が始まる