第1章 医療

わからん

「ワクチンをうったのに肺炎になったのはおかしいじゃないか」。

その日一番の患者さんであったSさんの言い分です。肺炎球菌ワクチン接種に対し国の助成が受けられるようになりました。その影響で接種に関して質問をされる患者さんが多くなっています。Sさんもワクチン接種を受けられたようですが肺炎になったのです。

肺炎はいろいろな細菌の感染により引き起こされます。肺炎球菌ワクチンを接種すれば肺炎球菌による肺炎にはならないけれど、他の細菌による肺炎を予防するものではありません。医療関係者なら周知のことです。しかしワクチン接種時にSさんへの説明はなかったようです。疑問を呈するSさんに少し時間をかけて説明しました。

「それで納得した。いつもかかっている医師は聞いても説明してくれん。話したって何がわかると言われる」と言い終えた後Sさんは出て行かれました。医師の言葉、対応に対する毎度お馴染みの患者さんの不満のお話です。

医療に関しては、医学を学んだ者にとり当たり前、常識と思う言葉、物事であっても素人の患者さんには理解できないことが多い。しかし、なかなかそのように理解している医師は少ないようです。

忙しい外来の中でわかりきったこと(医師自身にとって)をくどくどと尋ねる患者さんはあまり関わりたくない、敬遠したい患者さんです。そのため「素人に何がわかる」「説明したってわからん」「黙って医者の言うことを聞けばいいのだ」などの傲慢な発言に繫がるのでしょう。

ただ化石医師は話したことを理解して頂けないのは説明する方の努力が足りないのではないかと思います。