高校の講義を担当していた頃、化石医師は生徒達に講義の内容を理解して貰うために図表はもちろんのこと、様々な道具を用いてみたり、時には実演あるいは生徒達自身に経験して貰うなど、あれこれ工夫をしました。そして基本は相手の知識に合わせわかりやすい言葉に変換して話をすることでした。
医療でも例外ではありません。大事な身体のことですから高校の講義よりなお一層理解して頂くことが大切です。
前述の肺炎球菌ワクチン接種問題も接種の時に「このワクチンは肺炎球菌による肺炎を予防するものです。でも肺炎は肺炎球菌以外にも様々な細菌により生じます。だから肺炎球菌の予防をしても他の細菌による肺炎を予防するものではないですよ。これまで通り感染予防に注意して下さい」と説明しておけば患者さんの誤解もなかったでしょう。
外来には様々な訴えの患者さんがやって来ます。中にはいつもくどくどとお話しされノイローゼとしか思えないような方もいます。でもそのような神経質、考え過ぎと思ってしまう症状であっても、現実に患者さんはその症状で苦しんでいるのです。どうしたらその苦しみを取ってあげられるのか。そう思うと患者さんの訴えをしっかり聴いてあげることが解決の糸口になります。
一見神経質と思うような症状の中に実は重大な病気が潜んでいることもまれにあります。長い医師人生の中で訴えが過剰過ぎると周りから思われていた患者さんが検査では発見しにくかったものの、実はがんを抱えていた経験を何度もしています。
そのような反省を含め患者さんの訴えをしっかり聴き、わかりやすい言葉で説明するように心掛けています。でも最近そうした患者さんが他所から回されて増えてしまいました。