リリスは己を奮い立たせるとソフィアの後を追って宮殿の廊下を抜け、ソフィアの寝室の扉を叩いた。返事はない。
何度も何度も扉を叩くと、ようやく扉が開いた。
リリスはおそるおそる部屋に入った。明かりは灯されておらず、異様な不気味さが漂い邪悪な何かがリリスを拒んでいるようだ。
大きな鏡の前にソフィアが座っていた。
「ソフィア様!」
ソフィアはリリスの問いかけには答えず、そばで眠っているルシフェルを無表情で見つめていた。リリスはソフィアの表情を窺いながら言った。
「ソフィア様、なぜそんなに急いでルシフェル様と結ばれようとするのですか?」
ソフィアは憤怒(ふんぬ)の形相(ぎょうそう)でリリスを睨みつけた。
「リリス、よく聞くのだ! 私は神が創造した地球を守るべく命を受け、この地にいる。いわばこの地球は神から私への贈り物だ。だから私は地球を守っていくことを使命と考えている。天界最高位のルシフェルと婚礼の契りを交わすのはそのためだ。私は王子を授かり、永遠の帝国を築いて統治するのだ。神さえも邪魔できぬ帝国をな!」
リリスの顔がこわばった。ソフィアはリリスの顎を掴み、頬を舐めた。
憎悪に満ちた冷たい目がリリスを凍りつかせた。
リリスは恐怖に震えながらもソフィアから目をそらさなかった。いや、そらすことができなかった。
「地球はルシフェルと私が統治する。なのに神はあんな弱き者を地球の長にしようとしているという。なんと愚かなことか!」
ソフィアはリリスの震える手を取り、笑みを浮かべて言った。
「リリス! では聞くが、そなたはこれから誰に仕えるつもりか? 愚かな神か? それとも……」
ソフィアから笑みが消え残忍な表情になった。リリスは声を震わせながら答えた。