「雫ちゃんが……今はもうすっかり元気になって……安心した、って。そしたら……すごく悲しそうな顔して、泣かせちゃって……」

「…………」

「ごめんって言ったけど……ずっと泣いてて……一人にしてって……」

「…………うん」

「俺……全部聞いてたのに……」

雪野さんは最近すごく明るく笑うようになった。でも、彼女の悲しみはきっと、少しも癒えていない。隼人の話を聞いてそれが確信になった。みんなが楽しそうにしていても、時折寂しそうな、悲しそうな顔をしていることがあったけど、彼女の口からは一言もそんな話は出ないし、僕の勘違いかもしれない。

それに、つらいことを思い出させてしまうのも嫌だったから、彼女の家のことを聞くのは避けていた。

優しい彼女だからこそ、周りに気を遣っていたのだろう。どんなに悲しくても、寂しくても、そんなそぶりを少しも見せずに、一人で耐えてきたんだろう。

「透……俺、どうしたらいいと思う?」

「もう一度謝ろう。僕も一緒に行くから」

「……本当にごめん」

「それで、雪野さんの話もちゃんと聞こう。話したくないかもしれないけど、僕たちが何か力になれることがあるかもしれないし」

「うん」

ひとしきり泣いて、気持ちが収まったころに隼人は帰っていった。隼人が言ったことは確かに雪野さんの事情を知っている人からしたら無神経だったと思う。

でも、誰よりも彼女を心配して、彼女のことを大切に思っていて、ずっと元気になってほしいと願っていたからこそ出た言葉だ。一番近くにいた僕はそれを理解しているし、隼人と同じように雪野さんが笑顔でいられることを願っていた。そんな二人がこのまま疎遠になってしまうことがどうしても耐えられなかった。

翌日の放課後、僕は雪野さんを隼人が待つ屋上に連れていった。

「雫ちゃん……あの……俺の顔なんてもう見たくないかもしれないけど……」           「…………」   

沈黙が続く。僕が二人を引き合わせたんだからなんとかしないと、と思って言葉を探すが見つからない。隼人を許してほしいと言うのも彼女を傷つけてしまいそうだし、かといって隼人の気持ちもわかるから責めることもできない。追い詰められたような気持ちでいると、先に口を開いたのは雪野さんだった。

「この前は……ごめんね」

『え?』

二人の驚きの声がそろう。

「あのときはいろんな感情で頭がいっぱいになって……。佐竹くんはずっと私のこと心配してくれていたのに」

「──雫ちゃんは謝らないでよ、俺が本当に無神経だったんだ」

「あの、僕が二人のことに口出すのは違うかもしれないけど、隼人はずっと雪野さんに元気になってもらいたいって思ってたんだ。僕たちじゃ頼りないかもしれないけど、これからはつらいときは無理に隠さないで頼ってほしいんだ」

次回更新は3月15日(日)、20時の予定です。

 

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