キリスト教徒は神聖なものとして純潔を説く。そして聖職者は妻帯を禁じられている。しかし彼らの多くは複数の妻を持つ。我々は彼らとは違う。男は好きな娘を奪い妻とする。そして夫として一生涯妻を守る。娘は妻として夫とともに生きる。だから彼らより我々の方が優れている。
彼の腕ならば見張りを倒して逃亡することは不可能ではなかったはずだ。でも彼はそうはしなかった。仲間を傷つけることはできなかった。
男はオーディンの教えに忠実に生きようとしたのだ。私は彼が間違ったことをしたとは思わない。彼は信念に従い愛に忠実に生きたのだ。
その日、我々は罪を犯した死者を丁重に葬り浜を去った。船では失意の女が海に飛び込まないよう仲間の娘たちが周りを囲み見守っている。
【19日目/晴】
船はフランクの海岸に沿って滑るように進んでいく。三昼夜の航海の後、大河の河口に位置する港に碇を下ろした。ここは未だフランクの土地だ。油断はできないが、この町は見るからに富んでいる。ここの住民が危険を冒してまで我々を襲うことはないだろう。
船長は土地の役人と話を付け、その後、港の商人がやってきた。ここで荷の一部を入れ替えて次の寄港地であるイスパニアを目指す。その地を支配するサラセンの好む商品を積み込む。
恋人を失った女が土地の商人に連れていかれた。サラセンではここでの売値の5倍で売れるという。私は遠ざかる女の背中を見送った。どのような運命がこの不幸な女を待っているのか。
夜明け前に船団は河口を離れた。
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