はじめに
肥満人口やアルコール消費量の増加などによる胆石形成のリスク因子の動向から、5パーセント程度といわれていた本邦における胆石保有者は、年々増加していると推測されています。
2017年9月に放映されたNHKの人気番組「ためしてガッテン」では、胆石保有者は最大で1,000万人以上と紹介されていました(「油断大敵! 保有者1000万人“胆石”の事実」の回)。
このように多くの方が持っている胆石ですが、胆石というと、一般の方はまず腹痛を伴う胆石発作や急性胆嚢炎を思い浮かべられることでしょう。しかし、激痛を引き起こし、一晩で急変することのある恐い重症胆管炎や治療が困難な重症膵炎という病気も、胆石が原因となることをご存じの方は少ないと思います。
一方、胆石の多くは、コレステロールが結晶化したものです。胆石の成因を考えることは、食生活や生活習慣を見直すうえで重要なことです。
これらのことを踏まえて、本書の第1章から第4章までは、胆石と関連のある肝臓・胆道・十二指腸・膵臓などの人体の構造と機能や、侵襲に対する免疫学的反応と病理組織学的変化、各種の血液生化学検査や画像検査の所見、剖検や緊急開腹手術所見などの知見に基づいて、
胆石の成因や胆石によるお腹の痛み(胆石発作や急性胆囊炎)、胆石によって起きる肝臓の病気(胆石肝炎、急性胆管炎)や膵臓の病気(胆石膵炎)について、一般の読者にも理解していただけるように物語風の対話形式で、解説しました。
近年は、科学的根拠に基づいた医療(Evidence-Based Medicine:EBM)の手法に則って胆石症や急性膵炎、急性胆管炎・胆囊炎の診療ガイドラインが作成され、その基軸に沿って啓蒙活動が行われています。第2章から第4章でも、これらのガイドラインの内容を紹介しています。
私は、重症の胆石膵炎の病態や、胆石によって壊死性膵炎が生じる謎、を解き明かしたいという思いに駆られてきました。第4章の第3回「重症の胆石膵炎はハイブリッド型」は、その集大成というべきものです。
その内容は、ほかの成書には見られない私の持論を紹介しています。私の考えが読者の皆さんに伝われば、望外の喜びです。第5章「重症型胆石膵炎の診療の実際」は、専門的で医療関係者向きとなっていますが、関心のある方はお読みください。