豊子は沢田に告白することができなかった。なぜなら、明らかに沢田が想っているのは妙子であったことに気づいていたからだ。
それでも豊子は、いつか自分のことを好きになってくれるのではないかと思っていた。遠く消えゆくような光が豊子を覆っていた。沢田と妙子は、そのことに気づけば気づくほど胸が痛くなり、どうすることもできなかった。
雲ひとつなく晴れ、蝉の音が騒がしいある日のこと、天気も良かったので、豊子は帰り道に沢田と妙子を近くの公園に誘った。沢田が住む町は少しずつ賑わいを増していたため、憩いの場として小さな公園ができていた。
公園へ三人が到着すると、白い木製のベンチがあった。真新しいもので三人には新鮮に感じられ、そこに三人は座った。ベンチの周囲には、色とりどりの花が咲いており、可愛らしく囲んでいた。三人は鳩が止まっていたことに気づくと、沢田は小さな木箱に入った無人販売の餌を買った。
沢田が真っ先に公園の中央へ進み、餌をばらまいた。羽ばたきが乾いた風のように鳴り、鳩たちは一斉に集まってきた。
「ほら、餌をばらまくと鳩が寄ってくるよ」
「あら、本当。私も沢田さんと餌をあげるね」
そう言いながら、豊子は沢田の元へ行き、一緒にばらまいた。すると、鳩は二人の周囲から逃げるように飛び立っていった。
「おかしいわ。どうして私が餌をあげると飛んでいくの?」
豊子はむすっとした表情でベンチへ戻ってきた。
「じゃあ、今度は私があげるから」
そう笑顔で言いながら、妙子は沢田の元へ行き餌をばらまいた。すると鳩は二人に喜びの声をあげるかのように集まってきた。
その様子を見て、豊子は悲しくてたまらなく、泣きながら走り去ろうとした。
「豊子、待って」
「もういいの。もういいの。もういいのよ」
「豊子さん、待って」
突然、雨が豊子の涙をかき消すかのように降ってきた。彼女が走り始めると、路面の水たまりの水がはね上がって、一つの道が悲しみの欠片の足跡を残しては消えていった。
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