【前回記事を読む】セミラミスにクレオパトラ…淫乱な女たちの亡霊が目の前を通り過ぎていき、私はビンビンになって…

第六歌

目を覚ますとダンテは、第三の谷にいた。

そこでは現世で大食いだった連中が、冷たい雨に打たれて罰せられている。〝ケルベロス〟(*1)という三つの頭の怪物が、連中を食い千切って吠えたてる。

地上に横たわっている一人は、チャッコという渾名で呼ばれている。彼は帝国分裂の未来を予言する。

ウェルギリウスがダンテの質問に答え、二人は第四の谷へ降りていく。

この義姉フランチェスカと弟パオロの憐れな物語に、

私は怒りと悲しみに心、散々に乱れ、意識を失って又も倒れたが

気がついてみると

私の周りは前を見ても、横を向いても、

何処を見ても、凡そ見たこともない自責と、

後悔にさいなまれる人ばかりだった

呪われた、冷ややかな、重たい、永劫の雨が降る

第三の谷に来たのだが、

その雨の量も、規則性も、更新されることはなく

大粒の雹や、濁った水や、雪が

暗黒の大気の中を降り頻る

そしてそれを受ける大地は悪臭を放つ

 

〝ケルベロス〟という獰猛奇怪な獣が、

この泥氷に埋もれた連中の上で、

三つの頭から犬に似た咆哮をする

その目は赤く、髭は脂でドス黒く、

胴回りは太く、手の爪は鋭く、そして、

亡霊どもに、爪をたてる、呑み込む、引き裂く

雨に打たれて亡霊どもは、犬のように喚き叫び、

背を向けては腹をかばい、

腹を向けては背をかばい、この惨めな冒涜者たちはのたうち回る