私たちに気付くと、怪物〝ケルベロス〟は、
三つの口を開き、牙を剥いて、
その手足をブルブルと震わせた
するとウェルギリウスが両手を広げ
土を掬い、掌いっぱいの土くれを今にも
むしゃぶりつかんばかりのその口の中に放ってやった
丁度餌をせがんで吠えたてていた犬が、
餌にありつくと、貪るのに夢中になって、
おとなしくなるように、
この鬼〝ケルベロス〟の汚らわしい面も、急に押し黙った
今までは亡霊たちが、いっそ聾になりたいと思うほど、
吠えまくり、叱咤していたのだが
豪雨に叩かれて、打ちしおれた亡霊たちの上を、
私たちは渡っていった、その上を踏んでも、
彼らの体は虚しく反応は乏しかった
彼らは皆、地に臥せていたが、
そのうちの一人が、私たちが前を通るのを見ると、
いきなり体を起こし、座ろうとした
「おい、お前はこの地を巡っていくらしいが?」
と、私に言った、「どうだ、おいどんに見覚えはないか?
おどれは、わしが死ぬ前には生まれてけつかるんじゃが」
私はその亡霊に言った、「不安懊悩でYOUのヨウ姿が変わったせいか、
私にはどうも思い出せんYO
だが、YOUは誰だ? このような痛ましい場所に入れられて、このような罰にあたって、
他にもっと酷い目があるにしてもYO」
すると彼が私に言った、「わしのかつての帝国は今、嫉妬羨望で
えらいこっちゃ、それでもう、はち切れんばかりじゃが、俺は
まだ帝国が清潔だった頃そこで暮らした、
君たち市民は俺のことをオカマのチャッコと呼んだ、
大食の大罪のせいでおどれもご存知の通り、雨に打たれてキャップを被っている
何も俺だけが惨めな亡霊じゃない
ここにいる奴は皆、俺と同罪で
同じような罰をくらっているんだ」と言って黙った