私は圭人の顔を覗き込んだ。その瞬間、圭人の顔が近づき、あっと言う間にキスされてしまった。チュッとしたフレンチキッスで、すぐに離れた。

「沙優は今から俺だけの彼女な、返事は」

私は思わず「はい」と返事をした。

それから三年間付き合いが続いた。そして、私と圭人は結婚することになった。ずっと一緒と約束したのに、結婚式の当日、圭人はバイクで事故を起こし、圭人の姿は結婚式会場にはなかった。

圭人が亡くなってから五年、私は恋愛に臆病になっていた。また、私は置いていかれるのかと……いや、圭人以外に愛する人は現れないと思っていた。

圭人という枝にしっかりとしがみついて離れることはなかった。それなのに南條さんに惹かれている。叶わぬ恋と分かっているのに……彼には彼女がいるんだから、今日も彼女さんとデートだし。そう思ったら涙が溢れてきた。

私は南條さんにメモを残し、自分の部屋で毛布にくるまり眠った。涙が止まらない、もうごまかせない、私は南條さんが好き。私は寝られないまま時間だけが過ぎて行った。その時南條さんが帰ってきた。キッチンで音がする、私の作った夜食を食べている。

シャワーを浴びて、しばらくすると、私の部屋のドアの音がカチャっとした。南條さんが入ってきた。私を見て一言呟く。

「そんなに俺と一緒は嫌なのか」

大きくため息をつき、私を抱き上げた。そして、寝室へ運んだ。ベッドに下ろす時ギュッと抱きしめてくれた。そして私の頬の涙の跡にチュッとキスをした。

「沙優、俺を好きになれ」

南條さんはそう呟くと、寝室を出て行った。ドキドキが止まらない。どういうこと、何が起きたの、私の頭の中ははてなマークでいっぱいになった。

 

次回更新は3月8日(日)、22時の予定です。

 

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