【前回の記事を読む】ずっと一緒と約束した彼――結婚式当日バイクで事故を起こし…
第四章 この世にいない大切な存在
俺はまたデスクチェアーで眠った。朝になると、一足先にキッチンに向かった。後から沙優が起きてきた。
「おはようございます」
「おはよう、よく眠れたか、ベッドで寝て構わないから」
「それなら、南條さんもベッドで寝てください。私と一緒は嫌ですか」
「そんなことはない」
俺は沙優とベッドを共にすることにどうしても納得がいかない。何故愛する男がいるのに俺とベッドを共にしようなんて言えるんだ。沙優は悲しそうな表情を見せた。この時全く沙優の気持ちは分からなかった。
「分かった、これからはそうしよう」
沙優はニッコリ微笑んだ。しかし、男の名前がどうしても頭から離れない。俺は意を決して沙優に確かめることにした。元々、沙優に伝えなければいけないことがあった。
「沙優、俺の婚約者の振りを頼んだのを覚えてるか」
「はい」
「婚約報告会見を近々開く、問題はないか」
沙優は少し考えて口を開いた。
「彼女さんにはなんて言うんですか」
「彼女は問題ない」
「そうですか、それなら私は問題ありません」
俺は大きく深呼吸をしてから言葉を発した。
「沙優の男はなんて言ってるんだ」