沙優は不思議そうな表情で俺を見つめた。でも俺の言うことに納得したみたいで、「大丈夫です、きっと許してくれると思います」と言った。

「ちゃんと確かめなくていいのか」

「そうですね、今度一緒に行って貰えますか」

俺を紹介しようというのか、しかしはっきりさせておいた方がいいと思い承諾した。そして俺は沙優と出かけた。

「カーナビに住所を入れる、教えてくれ」

「はい」

俺は言われた住所をカーナビに登録した。カーナビに表示された地図の矢印は、霊園を指していた。どういうことなんだ。とりあえず向かった。そこはやはり霊園だった。

「ちょっと待っててください」

沙優は俺を待たせて、桶に水を汲み、お線香とお花を用意した。

「南條さん、こっちです」

俺が連れて行かれたのはお墓の前だった。その墓石には本郷家と刻まれていた。

「圭人、久しぶりだね。今日は私の命の恩人を連れてきたよ、もう少しで圭人の元に行くところだったのを助けてくれた人、南條貢さんよ。だから恩返しに南條さんが困っているから婚約者の振りをすることになったの、いいよね」

「南條さん、私が付き合っていた本郷圭人さんです。私を置いて先にあの世に行ってしまって、五年前のことです」

俺は墓石の前で手を合わせた。沙優がうわごとで呼んでいた「けいと」は元彼で、しかも五年前に亡くなっていたとは……

「沙優、事故だったのか、それとも病気か」

「事故です。結婚式当日バイク事故で、彼は式場に姿を見せることはありませんでした」

「結婚式当日だったのか」

沙優は頷いた。