しかし実は前科のある人で、ある日、夜の繁華街で無銭飲食で逮捕されました。本人は私を呼んでくれと警察で言ったそうですが、警察は無視したようです。私はその人に大事なお金「三千円」(現在の価値で二万円弱くらい)を貸していたのですが、それらはすべてギャンブルに使われ、結局貸したお金は戻ってきませんでした。
人に騙された経験もいい人生勉強になりました。田舎育ちで、上京したばかりの世間知らずな私には、その人の内面や人間性までは残念ながら見抜けませんでした。
そうして一年が経ち、仲間たちが都内の私立大学を受験する中、私は地方の国立大学の受験のため新聞配達を辞めて、地元の熊本に戻り受験しました。地元の大学を卒業して教員になり、育ててくれた祖父母の面倒を見るつもりでした。しかし国立大学の受験に失敗し、再び大学進学のため上京することになったのです。
再度上京して新聞広告欄で見つけたのは中野区沼袋にある新聞販売所でした。今度こそは大学受験に失敗できないので、確実に合格するために受験科目を五科目から三科目に絞り、私立大学を目指すことにしました。自力のみでは厳しい受験競争に勝ち抜くことは無理だと身に沁みましたので、西武新宿線の高田馬場駅前にある予備校に通うことにしました。
しかし、新聞配達をしながらでは時間が限られており、正直なところ受験勉強の時間が足りなかったのは事実です。でも真面目に予備校に通って翌年、漸ようやく私立大学の法学部に合格することができました。国立から私立に志望を変更しましたが、残念ながら第一志望には届きませんでした。
新聞販売所での地方の仲間との共同生活は、仕事は辛くても楽しさがあり、何十年経た今でも当時のことは良い思い出として鮮明に記憶に残っています。