以下は、夢の中のことである。
歩いていた。
傍らに、妻がいる。
街は明るい。
だが、車は少なく、人の姿もあまりない。
妙に、静かな街を歩いている。
「どこへ行くんだ?」
妻に聞いた。
しばらく、返事はない。
何かにとりつかれたように、黙々と歩いている。
「どこへ行くんだ?」
もう一度、聞いた。
「あら、忘れたの」
妻が、私を見る。
「これから、M子さんとN雄ちゃんに、会いにゆくのよ」
意外な言葉であった。
「会えるのか」
「会えるから、行くのよ」
妻の言葉が、冷ややかに響いた。
「死んだ人に会えるなんて。これ、夢なんだよな」
弱々しい声で、聞いた。
「当たり前でしょう。そんなことも、わからないの」
吐き捨てるように言って、足取りを早め、どんどん先へ行く。
こんな、本当らしい夢があるのか。会話にしても、風景にしても。夢にしては、あまりにも出来過ぎている。
修善寺が見えてきた。
通りから分かれた細い道に入る。
「これで、いいの?」
俺の認知症を心配している。
「大丈夫。間違いない」
真夜中と同じだ。
でも、同じ場所なのに、受ける感じは全く違う。別の世界のようだ。
今は、明るいせいか。
それとも、夢の中であるせいか。
このまま行けば、歩いている内に、木々が開けた所に、木製のベンチがある筈だ。
「まだ?」
「この辺りの筈だが……」
心細くなってきた。病気が、まだ治っておらず、間違えたのか。
「あっ。ベンチだ」
妻が、先に見つけた。